君が重なる、記憶の俺と。


「ほら!やっぱり私スゴいっ!!もしかして…天才なんじゃない?」

 君の言葉を耳にしたら、一年前の苦い記憶がフラッシュバックした。

「私の才能に嫉妬してるんですよ!」

 自信満々の彼女の言い種に、キリリと胸が締め付けられる様に鳴る。


───君は……こんなところで潰れちゃダメなんだ…───

 フッ…とよぎったその言葉を抱きながら、一歩一歩…君へ近付く。



 合宿始まってからすぐに、とにかく目立つ君の事が気になっていた。元気いっぱいで、前向きで、ちょっとだけお調子者。だけど…人一倍努力家で、テニスを心底楽しんでる。そんな君から、目が離せなくなっていた。

 そんな君が見せた、心の淀み。その様子が…思い出すのもキツい昔の俺の姿と重なって見えて…───



『この合宿でも充分通用するだろ!』

『俺の技術…かなり凄いじゃん!』

『もう誰にだって負ける気しないねっ!』

 補欠扱いで合宿に参加出来ただけの選手のクセに、デかい口を叩いていたあの頃。思い出すだけでもガンガンと頭に響く、不快感と後悔に満ちた言葉の数々。


 叩かれて

 なじられて

 呆れられて…

 見放された───


 自分自身の情けなさに恥ずかしくなって、合宿を逃げ出そうともした。だけど…ここで終わりにしたくない位に、『テニスが好き』って気持ちが俺を支えていた。


 折れない心があったから、いま俺はここに立っている。この場所に、再び立っていられるんだ。

 でも君に…君にその心は、宿っている?



 何度も、躊躇った。何度も、引き返そうともした。言えば、態度に出せば、確実に彼女に嫌われる。けれど…見捨てられなかった。このまま放っておいたら、多分彼女は駄目になる…それだけは、あってはいけない。

 多分、もう既に惹かれていたからだろう。彼女のテニスに…そして彼女自身に。

 だから…───



「ねぇ、本当にそう思ってる───?」



* * * * *

全くラブ要素の無いお話ですねι選抜合宿の天才ルート時のひとコマです。何を隠そう、私はパーフェクトルートよりも天才ルートの方が好きだったりします。

カップリングか…と言うと、定義は怪しいのですがι

ちょっと毛色の違う清巴ですね。実はずっと温めていたネタだったり。千石さんが去年の選抜で繰り上がり採用って以外、完全に捏造まみれな内容ですが…一度やりたかったので満足!(笑)

実際ゲーム中も、天才ルートだと本当いつもの彼からは想像つかない程厳しい言葉の数々を言われるのですが、上っ面を飾るだけではなく本音で接する姿に彼の本気を見て、更に好きになりました。

あの言葉、想像ですが千石が選抜合宿補欠の地位を経験してるからこそ出てきたものだと信じて疑ってません。自分も前に潰れそうになったし、実際に潰れた人を何人も見た…。だからこそ、本気で彼女を救いたかった。

天狗になってもいい。大事なのは、その事に気付いて前に進めるかどうかだ…。多分この信念が自分にしっくり来たんだと思う。

とはいえ、ゲームのセリフまんま引用もアレなので、取り敢えずそれらしいセリフで場面を想像出来るかな?程度に止めておきました(あ、いや、ホント一応セリフをメモってはあるんですよ?←嘘臭い)


清巴の真髄は天才ルートにあります(笑)

ま、最初は単純にブランコスチルを見たさにやってみただけなんですけど!(爆笑)


2008/6/19


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