幸せ、またひとつ


 ───あぁ…俺って今、最高潮にラッキーだなぁ。




 道を歩く人達が、微笑ましそうにこちらを見ている。さっきなんて見知らぬお姉さんが俺の顔を見てクスクス笑ってたし…。あまりに恥ずかしくて緩みっ放しの口元を隠したいけど、両手が塞がってるからそれも無理。

「…ははっ」

 苦笑混じりに漏れた声にすらも、今の俺の幸せ気分が勢い余ってこぼれ出したみたい。なーんか…自分でもアホみたいだな〜と思いながらも、ひどく浮かれているこの気持ちをなかなか抑えきれないんだ。

「うぅ〜ん…」

「おっと!いけない、いけない」

 少し手の力が緩んだ拍子に体勢が崩れて、背中のキミが微かに呻く。慌てて立て直すと耳元を安らかな寝息がくすぐった。

「良かった…起こしてはいないみたいだ」

 ホッと胸を撫で下ろして、再び歩き出す。無防備な彼女に少し悪いキモチも芽生えたりしたけれど、それを上回るほどに、俺に気を許してくれている事実が嬉しくて…気持ちがふわふわしている。

「幸せ、だなぁ…」

 もう一度、口に出して噛み締めてみる。

 言葉が背中の体温に釣られてじんわり体に染み渡っていく。



 学生だと自由になるお金も限られていて、今日もせっかくのデートだったのに、近所の運動公園にしか誘えなかった。男の俺としては自分の不甲斐なさが悔しかったワケなんだけど、そんな事情なんてお構い無しに彼女…巴ちゃんは全力で楽しんでくれた。

『お金なんて要りませんよ!千石さんと一緒なんですもんっ!何をしてもすっごく楽しいですっ♪』

 そんな言葉も、最初は慰めのお世辞なんだとばかり思っていた。でも最後にはこうして疲れて寝てしまう位に楽しんでくれたんだ。その事実がとにかく嬉しかった。

「コレって…俺だけの役得、だよね?」

 ちょっとした優越感に、浸りながら呟く。背中のキミは相変わらず安らかな寝息。

「また次のデートも、キミが疲れて撃沈するくらい楽しんでもらうからね」

 寝ている巴ちゃんにそう宣言する。

「…ふへへ」

「ありゃ?起きてたのかい?」

「…くすー……」

「…なんだ、寝言か」

 それでも、俺の言葉に嬉しそうに微笑んでくれてるみたいで頬が緩む。

「やっぱ…巴ちゃんには敵わないや!」

 寝言ひとつですらも、俺をこんなに幸せにしてくれるんだ。

「大好きだよ、巴ちゃん」

 本当はおでこにチューしたかったけれど、ちょっと届かなかったから…頭をすり寄せてみた。この体温が、この温もりが…幸せ。

「うん、またひとつ幸せが増えちゃった」

 そう呟きながら、俺は夕暮れの街を最高に大事な娘を背中に感じながら最高にラッキーな気分で帰っていった…───



* * * * *

うっわ何てバカな話だ!!(爆笑)

おんぶってシチュも美味し過ぎて大好きなんですが、これじゃ千石っくんがただのアホの子ですねι全くオチてないし…でも幸せって気持ち、無性に書いてみたかったんですよ♪理由はもはやサッパリですが。

千石のハッピーの素は常に巴ちゃんであると良いなぁ〜…という願望ダダ漏れです(笑)



どうでもいいんですが…また巴ちゃんが爆睡しちゃってますねι(爆笑)


2008/4/17


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