‡素直な気持ちで…‡

 気づいてたの…。あなたのキモチ。

 いつもあたしの事心配してくれたね。ちょっとケガしただけでも、飛んできてくれた。
 『好き』って言葉、一言も口にした事無かったけど…あなたの気持ちなんて、一目瞭然。

 あたしのこと、愛してくれてる…

 でもね、残念。あなたは気付いてないのよ…あたしの気持ちに。絶対ヒミツにし続けたあたしの本当の心に。

 だけど、悔しいから自分からは決して言わない。あなたが少し、勇気を出してくれるのならば…きっとあたしも素直になれると思うのに。


「きゃっ!!」
「姫様大丈夫ですかっ!?【ベホマ】!!」
 足元が滑りやすい山道。不注意で木の枝に少し引っ掛けて、頬に引っ掻き傷を作ってしまった。ほんの少し、声が出ただけなのに…あたしですらビックリするほどの勢いで、彼は大急ぎ馬車の中から飛んできた。
「ク・リ・フ・ト?」
「ひぇっ!!」
 怒りを含んだあたしの声に、彼は咄嗟に顔を見上げて後ずさった。
「何度も言ってるじゃないっ!ちょっと怪我しただけでベホマをかけるだなんて馬鹿らしいわ!分かっているの!?」
「はは…ハイッ!!申し訳ありませんっ」
「もぅっ…」
 必死に平謝りする彼に、私は溜息しか出てこない。
(なんで……こうなるのかしらね…)
 渋い顔でそんな事を考えていた。
 彼があたしを思い遣ってくれるのは、とてもよく分かっていた。でも…何かが違うわ。
 あたしと彼の間には、悔しいけど目に見えない壁がまだ消えていない。
 『姫』と『従者』……彼はその関係に臆病で、あたしの気持ちなんて全然理解しようとしてくれない。

「貴女も大変ねぇ、アリーナ姫様?」
 全てを知っている様な顔で、マーニャさんはこう言った。
「別にそんなんじゃないけど……」
「なんなら私が少し目を覚まさせてきてあげよっか?」
 ちょこっと心が揺らいだけど、あたしは大きく首を横に振る。
「いいの。何年経ったって…あたし全然苦にならないもの」
「気長な話ねぇ…私ならバシッと一発で言わせるけどね」
「マーニャさんらしい!」
 クスクスと、女二人笑い合う。彼女の価値観は理解出来る。けれど、あたしに当てはめられるものではないんだもの。

「ホラ!いつまでそうして地面におでここすりつけてるつもりなのよ?さっさと先に進むわよっ!」
 彼の首根っこをむんずと掴んで一気に立ち上がらせ、あたしはスタスタと先を急ぐ。
「まっ…待って下さい姫様ぁ〜!!」
 彼は嬉しそうな涙目で、あたしの後を付いてくる。
 少しヤキモキはするけれども、こんな状況も嫌いじゃない。だから、あたしはこうして待ち続けられるんだ。


 いつかあたしの胸にしまっているこの想いに気付いてくれたら告白するわ。
 ちょっとドジな所も、一生懸命頑張る所も、ひどくオクテで弱気な所も、全部ひっくるめて…

──愛してるよ、クリフト……☆──



 〜おわり〜



* * * * *

王道のクリアリです。

かなりクリ→←アリだし、片両想い的なすれ違いですが、私なりにクリアリってこんな感じかな〜?…という解釈のもと出来た作品です。

大概においては女の子の方が恋愛オンチの方が萌える私ですが、クリアリだけはアリーナが一向に自分のキモチに気付かないクリフトに、ヤキモキした気持ちを抱えているほうが萌えまくりです。

クリアリのラブラブ話は、きっと他所様で素敵な作品がい〜っぱい読めると思いますので、こんなイレギュラーなお話もアリかもね!ってな軽い気持ちで構えて頂ければ嬉しいです(笑)

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