お日さま園の



¶リュウジとバレンタイン

「リュウジー!」
「あ、なまえ」
「リュウジ、今日は何の日でしょう!」
「今日はバレンタインだけど…もしかしてなまえチョコくれるの?」
「あたりっ、はいどーぞ。いつもお世話になってます。」
「わあ…今年もなまえの手作り?」
「うん!できたてだよー」
「すごく嬉しいよ。ありがとう、なまえ。」
「どーいたしまして!じゃ、私みんなにもあげに行くから。ばいばい、リュウジ!」
「あ、なまえ!」


今年のバレンタインはリュウジに渡してスタート!
お日さま園随一の常識人・リュウジはきれいにラッピングした袋を受けとるとにっこりと笑ってくれた。

「みんなって……心配だなあ」

「次はジェミニのみんなのとこに行こうかなあ」


¶砂木沼とバレンタイン

「む、チヨコレイトか。」
「うん、チョコレート。
イプシロンのみんなにはもう渡して来たよ。治もどーぞ。」
「そうか、有難く頂こう。…少し、待っていろ。」
「うん?」

…20分後…

「治、まだー?」
「うむ、できたぞ。」
「………なにこれ」
「御礼状だ」
「あー…ありがとう治…」

治が持たせてくれた巻物はずっしりと重かった(しかも達筆過ぎて読めなかった)。


¶涼野とバレンタイン

「バレンタイン?」
「うん。だからチョコあげるよ。」
「…ふ、ふん。この私がチョコレートなど低俗なもの、口にするわけがなかろう。私が好むのは深淵なる凍てつく闇だけだ」
「ふーん、じゃあいいけど。余った分はだれかにあげるよ。時間とらせてごめんね。ばいばい、風す」
「ま…待て、なまえ!」
「なに?」
「き、君がどうしてもと言うなら受け取ってやらないこともないが」
「ん。じゃあ、はい。」
「ふん、感謝するがよい。この私に食してもらえることをな!」
「…ありがとうございます」

いや、どっちかっていうと立場逆じゃね?腑に落ちねえ。
…まあ、めずらしく頬染める風介も見られたことだし、いっか。


¶晴矢とバレンタイン

「ダイヤモンドダスト…プロミネンス…ジェネシス…。うん、これで大体みんなに渡したかな。あとは…よし、ラスボス前は体力温存で行こう。晴矢ー!」
「あ?なななんだ綾奈かよ。どうした?」
「……晴矢、なんかそわそわしてる?」
「はあぁ!?んなわけねーだろ!テキトーなことぬかしてんじゃねーぞ、なあ茂人」
「え?あぁ、えっと…うん。」
「でも晴矢、ユニフォーム前後ろ逆だよ」
「え、あ!?……こっこれはたまたまだ!」
「スパイクも左右反対だし」
「へ」
「ていうか今日はバスケやってたの?さっきからバスケのボール抱えてるけど、スパイク履いてるのに?」
「…なまえ、待った、もういい。茂人も気付いてたんなら言えよな…俺ちょうかっこわりい」
「ごめんごめん、あんまり面白かったからさ。それで、何か用があったんだろ?どうしたの、なまえ」
「あ、そうそう。はい、これどーぞ、二人とも。」
「………!」
「ふふ。よかったね、晴矢」
「るっせえよ…。…サンキューな、なまえ」
「僕もありがとう。大事に食べるね。」
「うん!」

思春期晴矢と優しい茂人。


「さて、GPも回復したところでラスボスか…」


¶ヒロトとバレンタイン

だだだだだだだだだだだ

「なまえーー!!!愛してぐあっ」
「やっほーヒロト」
「ぐっ、や、っほー…なまえ。好きだよ、君のその見下した目…。よけるだなんてひどいじゃないか、おかげで壁に激突したよ…」
「いやあ、あんだけ全力で走って来られたらね」
「まったく、なまえは照れ屋さんだなあ」
「え、なにそれきもい」
「それで、こんなところに呼び出したりしてどうしたんだい?」
「私呼び出してないんだけど」
「照れなくていいんだよ。俺にはきこえたから、俺を呼ぶ君の声が…ね」
「どうしよう本格的に気持ちわるい」
「恥ずかしがっているのかい?なまえ」
「むしろお前の存在が恥ずかしい」
「またまたあ……ハッ」
「………」
「…なまえ、すまない。俺、デリカシーが足りなかったね…」
「分かってんじゃん」
「なまえは俺に愛の告白をしたかったんだよね、そうだよね!?」
「いや、チョコはあげるけど違…」
「君の気持ちがこもった本命チョコ、ありがたく受けとるよ」
「うん、殺意を込めればよかった」
「もー、ヤンデレなんだからなまえはー(はあと)」
「ちょ、マジしゃべんないで、吐き気がする」
「ツンデレ!ツンデレだねなまえ!そんなに俺のことが好きだなんて…よしなまえ、俺の部屋に行こう」
「は?」
「そして愛を語り合おう…ベッドの上でね」
「ちょ、やめ」
「ほら暴れないでー」
「もう、だからこいつは嫌だったの!こうなったら…玲名ちゃーん!」

たたたたたたたたたたた

「グラン貴様あああああああああああああ!!!!!」
「れ、玲がはっ!!!」
「玲名ちゃーん!」
「なまえ!」
「玲名ちゃん、怖かったよー!」
「安心しろなまえ。私が来たからにはもう大丈夫だ。ヒロトには何もされていないか?」
「うん!」
「ヒロトと書いてゴキ×リと読むのはやめうぐっ」
「玲名ちゃんかっこいい」
「ふっ、なまえは私が守ってみせる」
「ありがとう、玲名ちゃん。はい、これ私の本命チョコ!」
「毎年すまないな」
「ううん、玲名ちゃんだーいすき!!」
「私も愛しているぞ、なまえ」
「えへへ、恥ずかしいよ玲名ちゃん」


「(……解せぬ)」


なまえと玲名に踏まれながら、俺はなまえにもらったチョコを口の中に放り込んだ。ビターチョコは俺の大好物のはずなのに、なぜか今日ばかりは苦さが胸に滲みて泣きそうになった。


¶エイリア女子とバレンタイン

「あ、そうだ。ちょうどよかった!玲名ちゃん、大ホール、一緒に行こう!」
「ああ、そうだったな。急がなければ」
「もうみんな集まっちゃってるかも!」


「なまえ、玲名、遅いわよー」
「あんまり遅いから先始めちゃったわ」


玲名ちゃんと二人で大ホールにかけこむと、みんなはすでに集まっていた。ドアを開けた瞬間、漂ってくる甘いチョコの香り。
バレンタインの日は夕方からお日さま園の女の子みんなで集まってチョコパーティーをするのが、私たちの毎年の決まりなのだ。

「遅れてすまなかった」
「ごめんね、みんな。ちょっとヒロトに捕まっちゃって…」
「全く、ヒロトにも困ったものね」
「瞳子さん!お久しぶりです」
「なまえ、玲名、はい。」
「わあ、クッキーだ!希望、ありがとー!!」
「私もあげる。」
「クララはティラミス?すごくおいしそう!」
「華は生チョコ作ったの。杏と穂香と一緒に!」
「わあ、すごい!」
「なまえのは無いッポー?」
「もちろんあるよ、はい!みんなにはカップケーキでーす!私の本命だよ、受け取ってね」
「やったポー!」
「なまえのお菓子おいしいから、マキだーいすき」
「ほんと?嬉しいな」
「…なまえ」
「なあに?玲名ちゃん」
「本命は私じゃなかったのか?」
「えへへ…ごめんね。でも、」
「知っている。…少し、いじわるを言っただけだ。お前のことだから57人分、全てが本命なんだろう?」
「うん!玲名ちゃんにはみんなお見通しだね。」
「当たり前だ、何年いっしょにいると思っている」



「みんな、いつもありがとう、大好きだよ!
これからもずーっと一緒にいてね!」



バレンタイン



(父さんへ
お日さま園は今日も元気いっぱいです。
今年はチョコレートは送れないけれど、手紙だけでも受け取ってください。
ハッピーバレンタインデー!
お日さま園のみんなより)


/お砂糖漬けの地球
title by spangle
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