「ジャーファルさあん」
「…………」
「ジャーファールさあーん」
「……うるさいですよ、なまえ」
「ジャーファルさあん」
「……なんですか?」
「私たちなんで残業なんかしてるんでしょうねー」
「仕事ですからね」
「ジャーファルさん、今日なんの日だと思ってるんですか! クリスマスイヴですよクっリっスっマっスっ!」
「落ち着きなさい」
「やだあ、ジャーファルさん、もう遊びに行きましょうよ。みんな帰っちゃったんだからいいじゃないですかあ。ほら、この外から聞こえてくる楽しそうな声……。王宮はもちろん、この国に私たち二人だけですよ、こんな日まで仕事してるのなんて! ねえ、なんで私たちだけ仕事してるんですかー」
「皆が先に帰ったのは管轄の仕事が終わったからですよ。私たちが残業に追われているのは、急務の書類にシンが直前まで手をつけず遊び歩いていたからです。明日の会談までに完成させなくてはならないんですから、急ぎますよ」
「ああ、恨みます王様……今度会ったら文句言ってやる」
「私の分もお願いしておきましょうかね。ほらほら、口じゃなくて手を動かす」
「はーい……。ジャーファルさん」
「なんですか?」
「遊びに行きましょう」
「本気で言っていないのがあなたのいいところですね」
「好きで本気じゃないんじゃないですよお。はーあ、こんな仕事さっさとやめて結婚してやる」
「誰かいい人でもいるんです?」
「いませんけど」
「それは残念」
「思ってませんよね」
「クリスマスにも仕事をしてくれる人材を失うのは痛いですから」
「誰がさせてるんですか。それに、恋人がいたってこーやって私を机に縛り付けるんでしょう?」
「そんなことはありませんよ。もしそうなら私だって、いくらなんでもクリスマスに仕事をさせるのは忍びないと思いますし、心が痛みます」
「心を痛めながら」
「仕事させます」
「ほらあ、やっぱり! ジャーファルさんの仕事の虫ー」
「とんだ褒め言葉ですね」
「オニー、アクマー」
「……それは聞き捨てならない。私だって鬼畜じゃないんですよ。ちょっとお待ちなさい」
「……なんですか?」


◇・・・☆


「どうぞ」
「これは?」
「コーヒーです。ささやかですが、私からのクリスマスプレゼントですよ」
「ジャーファルさん……! やだすてき惚れる」
「それを飲んで徹夜がんばりましょうね」
「ジャーファルさんなんてチョコと間違えてコーヒー豆食べて苦さに悶えてしまえ」



シンドリアにクリスマスないよね

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