私は休日に絵を描く事が多いんだけどね!
絵と言っても美術の授業でやるようなそんな大層なものを想像しないでね荒北くん
この間も暇だったからさ好きなキャラクターをたくさん描いてたの、上手い下手関係なくね。満足。
あぁそれでね、一般的に多分…線画と呼ばれる場所までいったんだ〜
んで、今日は気分がいいので色塗りもしよう!ってことになってね
しばらく塗っていると私の手がパタリと!あ、ここ重要ね!パタリと止まったわけさ!!
そして私は思う!「え、この色、何色?」とーー
描いてたキャラクターがよく着ている服の一部が紫のようなピンクのような…謎の色をしてたわけだよ。荒北くん
私の絵は完璧な趣味だから専門的な事が分かるようなそんな高度な技術は持ち合わせておりません!!
そういう時はインターネットから自分の気に入った色を拝借するの。紫、ピンク、画像って検索して
「それで一番気に入った色がシランって花だったの!ちなみに漢字で書くと紫に草冠ついた門の中に東って書く方のランなんだって!」
「ねぇ、荒北くんシランって花知ってる!?」とマシンガントークを続けた後にクラスメートの荒北くんに問いかけた
「知らねェ」
だよね。荒北くん花とか興味なさそうだもんね。偏見だから言うと怒られそうなので黙っておく
「荒北くん今のダジャレ?シランなんて知らんみたいな!?」
「バカなんじゃナァイ!?」
怒られた。やっべ、代わりに出した返事でも結局は怒られるって中々くるものがあるね
私が話しをするたびに荒北くんはますます不機嫌になっていく
それもその筈なんだけどね、あのマシンガントークの前にこの間見に行ったレースの感想を聞かれたのに答えないで始めた訳だし。
ちょいちょい私の話を止めようと頑張ってたけど最後は諦めて不機嫌になったっていうのが今の流れかな?うん、復習で大事だね!
ついには荒北くんも私を視界に入れなくなった。
喋る事も無くなってしまい私は机に頭を付けた
カチ…カチ…カチ…と秒針の進む音が教室を包む
「なァ…」
頭上から荒北くんの声がする、でも私は顔をあげない
「レース……そんなにダメだったのォ?」
ううん、違うよ。全然ダメじゃなかった。かっこよかった、凄かったよ。てかロードバイク知らない私にレースの良し悪しなんてわかるわけないじゃん
「オレ結構……なんでもねェ」
何それ言いかけてってズルくない?黙り決め込んでる私もズルいけど
「なァ」
ガタンとイスが動いた音がした。どうやら今まで荒北くんは私を見ずに話しをしていたらしい
「………寝てんのかヨ」
寝てないよ、起きてる。でも見えないよね
荒北くんは小さく舌打ちして、おい聞こえてるぞ。………ブレザーを掛けてくれた
フワリと荒北くんの匂いがする。……私は不器用な…不器用だけど優しい荒北くんが好きなんだよ。
私は眠くなりそのまま瞼を閉じた。
普段は黒に染められるその視界も…
いつもと違った荒北くんの真剣な姿が…私なんか気にも止めない背中が…こびりついて…離れてくれなくて泣きなくなった。
「 紫蘭:あなたを忘れない 」