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#44



「やめてくんない?……誤魔化せなくなるだろうが」

 声音が変わったことに気づいた土方が、愛しくて堪らない男の名を声に乗せる。あの日からずっと、胸の内で何度も呼んでいた。

「ぎんとき……っ!」
「……そんなところまで躾けしたっけ、俺」
「教えられてねぇよ!まだ全然足りねぇっ……もっとちゃんと教えろ、途中で放りだしたりすんじゃねぇ……っ」

 ぽたぽたと、温い雫が銀時の手首まで落ちては地面へ零れていく。土方をこんな風に変えたのは紛れもなく目の前の男だ。坂田銀時だ。こうして手を握っているだけで愛しくて堪らない。銀時に拒絶などされようものなら心の柔らかいところまでが軋んで壊れてしまうだろう。……やがて銀時の口から、穏やかな告白がされた。

「……足りねぇなら満たしてやらねぇとな」
「ぎんとき……っ」
「……おいで、土方。もう二度とお前を置いて行ったりなんかしねェから」
「……っ…ぐすっ、うぅ……ぎんとき、ぎんとき…っ」
「泣き虫さんだね〜、そんなに泣くんじゃねェの。……もう絶対に捨てたりしねェから。土方くんのこと」

 待ち侘びたように強く抱きついてくる土方をしっかりと抱きしめ返し、キスを交わす。従順に開いた唇から舌を差し込み合わせ、深い交わりへと変えてゆく。
(これからは首輪と口枷つけて監禁する必要もねェ……こいつは本当の意味で俺のモノになったんだ)
 うっとり瞳を閉じ、頬を上気させながらキスに溺れる土方。健気で可愛いらしいそれをじっくりと余さず視界に映し、銀時は満足げな笑みを深めた。
──やっと堕ちてきた。もう一生逃がさねェよ、十四郎。


透明色の支配


2020/06/07 10:46
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