Top >> Diary



Diary 

#38



 万事屋は俺といる時、ほとんど無愛想なツラをしている。他の誰かといる時は緩んだ笑みの一つでも浮かべてみせるくせに、俺が依頼人でも友人でもないからなのか。
今日は巡回中に出くわしたコイツが「暑くて溶けそう」なんて言ってくるからコンビニでアイスを買ってやって、半分に割ってから渡す。

「ほら食えよ。ガキどもにも買ってやったから」
「……マジで?」
「用事でもあったのか。なら返せ」
「返しません〜! 俺が貰ったんだから俺のモンですっ」

 奪ってやったら、顔を歪めて奪い返された。俺の顔なんざ見たくねェとでも言いたげに顔を逸らす。振り向きもしない。いつもそうだ。コイツは俺といる時はいつもそんな風にする。アイスは食うくせに何なんだよ。思わず本音が溶け出していた。

「……そんなに俺が嫌いなら、わざわざ話しかけてくんじゃねぇよ」
「は、はぁ!? いつ誰が言ったんだそんなこと! ……あ」
「……え?」

 ぴったり目が合う。振り向いた万事屋の顔は、びっくりするほど真っ赤だった。



「大丈夫かよ熱中症か?」
「そうかもしれねェから一緒に帰ろうぜ」


2019/09/15 15:47
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -