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#21
土方くんにムラムラします。口にしたら終わりそうな劣情を隠しているくせに、甘い翌朝の幸せを手に入れようとしていた。それは分かるが、銀時自身は酒に飲まれて、昨日の記憶が曖昧である。
そのせいで目が覚めた今、窮地に立たされている。
──件の相手が昨晩深夜、泣き出しそうに必死な瞳をして銀時を長椅子に押し倒してくれたのに、そこまでは覚えているのに、何と返事したのか忘れてしまったのだ。
現在、万事屋には銀時以外の誰もおらず、メモも残されていない。灰皿に押し付けられている煙草の吸い殻だけが情報の全てで、土方の姿は影も形も失せている。
「明日は非番だ」と言ってバツが悪そうにしていた土方の顔が可愛くて可愛くて仕方なかった筈なのに、非番の土方は今、万事屋に居ない。まさか断ったのか。気色悪いとか、思ってもないような事を天邪鬼な馬鹿野郎が口走ったとしてもおかしくない。考えるだけで目眩がして、身体中の血が冷めきってサラサラと床へ流れ出ていくようだ。
そんな時、家の引き戸が開けられる音がした。
「冷蔵庫、空じゃねーか。買い物行ってきた」
仏頂面に失敗したらしい土方は、自分でもそれが分かってるのか照れくさそうな顔をして買い物袋を提げている。
待て待て、まだ心の準備が出来てない。出来てないが、甘くて幸せな翌朝に手を伸ばせば触れられるんだ。準備体操第一ってことで、まずは言い損ねたおはようを言おう。
2018/06/04 20:33