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#18
「『手編みのマフラーは本気の証拠☆』だってよ。なァにが冬のロマンチックデート特集だよ、そんなもんよりジャンプ置けよジャンプ」
もう次で3軒目だぞコノヤローとぶつくさ言ってるのを聞きながらコンビ二の雑誌コーナーをハシゴする昼休憩。
煙草を1カートン買えればそれで良かった筈だったが、コイツと偶然顔を合わせた時点で諦めた。これはもう、なんだかんだと3軒目にも付き合わされる流れだ。そんな気はしてた。
付き合ってよ土方くん、と甘い色を溶かした声で駄々を捏ねられたら例えそれが「ついでに甘いモンも奢ってくんね?」の意味だったとしても断りきれなくなるのが惚れた弱みってヤツだろう。
万事屋がフンと鼻を鳴らして悪態をついた雑誌は、いかにも女の好きそうな恋愛ハウツー雑誌だ。人の気持ちを知ったように書かれたキャッチコピーに、俺も悪態をついてやりたくなった。
手編みのマフラーを渡すだけが本気の証と思うなよ。手編みどころか、どう頑張ったってマフラーすら渡せねェ本気ってのも、ちゃんとここにあるんだ。
「その……3軒目まで遠いし寒ィし、ちょっと休憩してかねェ?」
「……仕方ねェな」
気まぐれに誘われるだけでも楽しくて嬉しくて、でもそんな本音は隠したまま冬の風でひりつく頬だって、証拠になるだろう。ロマンチックと言えやしなくても充分だった。
2017/12/18 00:08