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#7



たまたま目が合った、気がした。
向こうはまだ先に居たから直近に見た訳じゃない。ただそれでも、目が合った気がしたから反射的に目を逸らした。
このまま真っ直ぐ進んで鉢合わせる訳にはいかなくなって、急遽指定ルートを迂回ルートに変更した。今通り過ぎたばかりの道を逆戻りして早足競歩する。競う相手なんて居なかった筈なのに「なんで避けてくるんだよ」と詰め寄られた。競歩相手になってしまった万事屋に肩を掴まれる。俺の足は無視して早足を続けるどころか太腿までびりびりと緊張して、肩は強張って、顔はみるみるうちに熱くなる。理由なんて答えられずに、無理矢理にでもその場から立ち去ろうとすると、万事屋はしつこく腕を掴んできた。

「答えろよ。俺なんかしたっけ?」

してない。お前は何もしてないから、何も聞かなくていいから、離してくれ。

「離せよ」
「最近巡回来なくなったよな。どこ探しても居ねぇんだ、ハゲとドS皇子のコンビは来るのによ」
「……離せよ」
「忙しいの? 解放してほしいんだったら、次の非番教えろよ」
「……っ」
「待ち合わせして、ちゃんと割り勘で飲みに行こうぜ。そしたら今避けてきたのもチャラにしてやるから」

お願いだから離してくれ。チャラになんてしなくていい。俺なんかには愛想尽かして、もう話しかけて来ない方がいいんだ。
好きだ。好きになっちまったんだよ。テメェのことが好きなんだって。言えるはずがない。言おうなんて思いもしない。

2017/06/12 01:40
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