Top >> Diary



Diary 

#51 - 左銃+ひふど



 一二三と銃兎さんと左馬刻くんと、四人でしゃぶしゃぶに来ている。和やかに歓談している周囲のテーブル。運ばれてきたのは、俺の給料じゃとても食えない上等な霜降り肉。唾を飲み込んだ。すぐにでも食べたい!と思ったのは俺だけじゃなかったみたいで、向かいの席に座る銃兎さんが目を輝かせている。
「すごいなこれ。ありがとう左馬刻……嬉しい。俺が食べたいって言ったから奮発してくれたんだろ。伊奘冉さんもありがとうございます」
「フン……別にどうってこたねぇよ」
 そっけない返答の割に左馬刻くんはすごく嬉しそうだ。銃兎さんも分かってるのか、俺と目が合った時にクスリと笑ってみせた。どうもテーブルの下で手を繋いでもおかしくなさそうな雰囲気を醸している。確認もしてないくせになんで分かるのかって、俺の手も今、握られたから。
「ここの会計はサマちんと俺っちが持つからさ、独歩も好きなだけ食べて良いんだよ!」
「あ、ありがとう一二三……」
 銃兎さんのようにスマートには伝えられないが、もちろん俺だって感謝している。でも一二三はともかく左馬刻くんに何と声をかけたら良いのか分からない。言葉を探して逡巡していると、左馬刻くんと目が合った。
「遠慮したらぶっ殺すぞ」
「ひゃいっ!!」
 ギラついた目で凄まれると恐ろしい。緊張で裏返った返事をして三人に笑われた。銃兎さんは左馬刻くんといつも一緒にいるけど、睨まれても凄まれても怖くないんだろうか。前にそれを聞いたら左馬刻くんが「俺様よりウサちゃんの方が怖ぇだろ」とジョークを言っていた。なんの冗談ですかね、って銃兎さんが綺麗に微笑んだから、アレはジョークなんだろうな、うん。
「あ、」
 サッと湯をくぐらせただけでほぼ半生の肉を食べようとしている気の早い銃兎さん。大丈夫ですかと言おうとしたが、それより早く隣の左馬刻くんが注意しようと思ったらしい。
「おい銃兎もっとしゃぶれ」
 俺と一二三は勿論のこと、周囲のテーブルまで見事に静まり返った。「うまくできねぇ。お前がしゃぶってくれよ」とかちょっと甘えた声で返すのやめてくれませんか。

2023/01/25 08:40
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -