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#28 - 左銃



「るせぇな……人が寝てんのにラップしやがって」
 棺のように閉じた瞼がゆっくりと開く。紅くギラつく眼が俺を見て、間違いなく睨んだ。
「……ああ、おはよう、左馬刻」
「ンなことしてまで俺様に構ってほしかったのかよ」
「無理やり起こしてすまねぇ。身体、なんともないか……?」
「おう。明日は出張だから騒ぎ起こすなって言ってたのはどこのウサ公だよ。寂しんぼのウサちゃんでちゅねぇ」
「っ、よく覚えてるな……」
「昨日の話だろうが」
「……そうか」
「? 変な奴だな。帰ってきたらメシ食おうって言っただろ。忘れてんじゃねぇだろうな」
「うん、それ、約束してたよな。思い出したわ、今」
「つかお前、声デケェ……おい銃兎!?」
 感極まった俺は、いよいよ泣いてしまう。しゃくりあげるたびに喉が引き攣れる。自分の声もリリックもフロウも大事な武器だったが、ここまで感謝したことはない。寂しかったのは本当で、俺はお前にどうしても起きてほしかった。左馬刻は長い睫毛で信じられないものでも見たように瞬きをした。瞬きをするなんて日常的なことだが、それがどんなに幸せなことか俺は知っている。
「くそ、……左馬刻、ばかやろう、お前……」
 罵ってやろうとしたが無理だった。左馬刻が目を覚ましたのは三ヶ月ぶりだ。


一体どこから話せば


2021/09/04 15:09
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