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#17 - 左銃(未来設定)



「たしかに俺もお前に惚れてる。でも応えられない」
 銃兎が好きだ。お前も俺様に惚れてんだろ?
 告白ってやつをした時、銃兎はそう言った。まるで口説いてきた俺様を宥めすかすみてぇに。応えられねぇって、なんだそれ。
 ディビジョンラップバトルで決着をつけるしかなかった時代が終わって、理鶯は復興したかつての軍に戻ることができた。合歓も中央区から出て、今じゃ平和に暮らしている。最近は一郎と仲が良いらしい。そういや昔もそうだったなと、忘れかけていた温かみを取り戻しつつあった。俺にとっては取り戻せてない大事なもんが、一つあるんだが。
「お前は良い兄貴で、俺たちにとって最高のチームメイトだった。左馬刻のことが好きだから、幸せになってほしいんだ。分かるか? ……お前は格好いいよ。俺が保証してやる。左馬刻に似合う相手が、これから沢山見つかるから」
 胸倉掴んでやろうと思ったが銃兎がいつにないツラしてやがるから拍子抜けして、できなかった。銃兎の夢は俺様が叶えてやるって言っただろうがよ。それなのに肝心の銃兎は俺様だけ残していなくなっちまって、全く連絡もつかないまま時間ばかり無駄に過ぎていく。あと半年もしねぇうちに、あの時の銃兎と同じ歳になっちまうじゃねぇか。お前の誕生日も祝いそびれたままだしよ。
 銃兎の言葉は、もしかすると予言だったのかもしれない。その言葉通り、俺は良い女達に出会ってきた。
 群衆の目を引くような美しい女。
 愛嬌があってニコニコ笑って癒してくれる女。
 賢くて教養のある女。
 家庭的で家事の上手い女もいた。
 どの女も俺を好きだと言ってくれた。良い女達に出会っては、きた。
 でもなぁ、銃兎。あの言葉はやっぱり不正解だったと思うんだよ。頭良いくせにたまにバカなこと言うんだもんな、お前。ヤクザのしつこさナメんなよ。いい加減てめぇを探し当てて話して聞かせてやらねぇと気が済まねぇんだ。なに話すのかって決まってんだろ?
どんなに良い女と出会おうが、俺様にとって一番似合うのは銃兎の隣だったって話。

冴えない幸せの模倣


2021/06/18 13:04
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