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#14 - 「泣いてねぇよノーカンだわクソが」



 思考と試行を繰り返す。先生の見立てじゃ銃兎は意識が沈んでるだけで、その命を必ず救えるはずだった。心臓の拍動はある。だがそれだけじゃ足りない。拍動だけでなく全てを掬い上げるために飛び込んだ脳内世界の数は百を越えたが、銃兎の意識を現実世界に連れ帰ることは未だ出来ないまま。
 二百個目の世界で、俺を背にして庇い立った銃兎の身体を敵の鉛玉が撃ち抜いた。急に突き飛ばされて息を呑む。一瞬の出来事だった。ぽたぽたと、赤黒い雫が地面に落ちる。
「ふふ、ははっ……残念でしたねぇ。左馬刻を死なせるわけにはいかないんです。……俺の、大事な仲間だからな」
 それはこっちのセリフだ!!大事なテメェが俺らと一緒に生きる世界をくれよ!!
なんのために俺様が──続けざまに文句をぶつけて怒鳴ってやろうとしたが、喉がひしゃげたように狭くなり何も言えない。呼吸すら上手くできなかった。ぽたぽたと、透明な雫が地面に落ちる。
「じゅうと! ……っ、じゅうと、銃兎……っ、銃兎ぉ……ッ」
 赤の沁みた手袋の指先が俺の目と頬を優しく擦った。なんで銃兎がそうしたのかなんて考えなくても分かる。鼻の奥がツンと痛い。
「ウサギは耳が良いからな、先回りも得意なんだよ。理鶯に宜しくな、リーダー」
 得意げな顔して笑いやがって、本当にテメェは頭が切れるくせに時々バカなウサちゃんだよ。
 いいか?今度は理鶯も一緒に連れて来てやるからな。だから待ってろ銃兎。お前は死なせねぇ。今度こそ。次こそは。三人で生き続ける物騒なヨコハマの未来を掴んで、俺も笑ってやるから。

2021/05/21 08:48
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