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#4 - 理銃・左銃



「理鶯、聞いてください。先週左馬刻の事務所に行ったらガラスケース一杯にAVがあったんですよ。ロリコンから熟女、素人モノからコスプレまで、それはもう幅広く」
「だからアレは俺様の趣味じゃねぇって言ってんだろうが!」
「それなら小官も見たぞ、銃兎。安心すると良い。左馬刻の最近の趣味は専ら警官モノだ」
「オイ理鶯それ以上言うんじゃねぇ」
「へぇ…?それはそれは。気になりますねぇ。理鶯、詳しく聞かせてください」
 連絡を取り合って俺の家に集まるのはいつものことだった。ただ、理鶯にはそんな明け透けな話だってするくせして、俺には内緒にしてたのが何となく面白くない。
 それに理鶯は左馬刻と一緒に見たのかよ。ヤクザの事務所でAV見たいとは全く思わないが、二人で仲良くしてるのはずるいだろ。面白いほど動揺する左馬刻を見る辺り、どうやらその警官モノがよっぽどお気に入りのシチュエーションらしい。居た堪れなくなったのか何なのか、ベランダに逃げたくらいだ。
 理鶯が言うには真面目な女刑事が潜入捜査を試みるが失敗し、敵に捕まるストーリーだったとか。察するに、きっと左馬刻は真面目で清廉な女刑事が好みなんだろう。汚職警官だとか悪徳警官だとか呼ばれている自分ではなく。
「……やはり婦警さんには勝てませんね」
「うん……? 小官にとって、銃兎は他の誰よりもセクシーだ」
「ふふ、それは嬉しいですね。あんなヤクザに好かれなくても良い気がしてきますよ」
「左馬刻は素直にならないところがあるからな」
「……アイツほど自分の欲に素直なヤツも中々いないと思いますが。実は私も敵地に捕まったことがあるんですよ」
「そうなのか? 初耳だな」
「格好悪くておいそれと話せませんよ。左馬刻とはその時にチームを組んで……あの時の左馬刻は万に一つも欲情なんかしてませんでしたが、少し状況が似ていますね」
「そうか……なるほどな。銃兎がストーリーの展開を真似ても、左馬刻は決して喜ばないだろう。複数の男に襲われ強姦されるシチュエーションだったからな」
「は、……私がそうなったらお笑い草ですね」
「? 貴殿がそんなことになれば左馬刻がその場の全員を殺すだろう。小官も殲滅作戦に協力する。血祭りだ」
 安心しろとでも言うように穏やかな笑みを浮かべてくる辺り、Crazy.Mの名は伊達じゃない。俺だってそんな奴らに強姦されるのなんか真っ平だよ。理鶯も左馬刻も、ただのチームメイトじゃない。セックスするのは二人とも俺の特別だから。思考を読まれたのか天然なのか分からないが、図ったようなタイミングでキスをされる。そうだ、好きじゃなければキスだってしない。
「ウサちゃんは単独行動禁止な」
 いつから話を聞いてたんだか。ベランダ寒ぃんだよと理不尽な文句を垂れながら、左馬刻が後ろから抱きついてくる。重なった唇から、まだ新しい煙草の香りがした。

2021/02/12 23:30
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