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銀土の



「これから抱かれるってのに随分と余裕だな? 土方くんよォ」
「……こんな雰囲気慣れてねェんだよ。悪口の一つでも二つでも言わねェとやってらんねぇ。……い、今だっておかしくなりそうなんだ…!」
 しどろもどろに本音を漏らす。つまりは切羽詰まっていた。なのに銀時は俺の心臓の音を掌で確かめてきやがって「おー、早ぇなあ」なんて呑気に呟く。手の位置は心臓の真上にあった。手つきこそいやらしくないが触れられた時は思わず、一瞬とはいえ呼吸が止まった。これが惚れた相手じゃなけりゃ喧嘩戦法で頭突きの一発は食らわせてる。
 どんどん早くなってくる心拍数に気付いているんだろうか。あまりにも下心を感じない動作に、もしかしてコイツ、さっきまで俺が夜這いを仕掛けようとしてたってことを忘れてるんじゃないかとまで思ったが流石にそれは要らない心配だった。
 ゆっくりと離れた手が再び頬へと添えられる、熱い掌に溶かされそうだ。細められた目と、その奥に秘められている感情を今から知るんだろうか。少し怖くて、でもそれ以上に期待と高揚があった。瞼を閉じる。しばらくして唇が重なった、今まで何度か想像だけはしてたが、思ってたよりずっと優しいキスで、思考がふやけていく。
「……ま、ウブな土方くんが頑張って誘ってくれたみてェだし? 恥ずかしいなら天井のシミでも数えとけ、そうしてる間に終わってるぜ」
「ベタなこと言ってんじゃねぇ。つーか天井なんかテメェが被さってロクに見えねェんだよ」
「なら俺に見惚れてればいいだろ」
 自信満々に言いやがって、なんなんだコイツは。それこそ心臓が止まる、とかコイツを調子に乗らせるだけのセリフをそのまま言うのはムカつくから「バカ」の一言に集約して俺の方から口付けた。

2020/09/11 16:20
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