Top >> Diary



Diary 

#33 - 左銃



 ガツン!バキッ!ボスン!バターン!バキッ!
 左馬刻が帰宅してきたことはすぐに分かった。聞き耳を立てる必要すらなかった。鍵を回す音がして、ドアが開く。それから俺が居ないことに気づいたんだろう。一しきり物に当たる、騒々しい音がする。何を殴ったんだアイツ。何を蹴ったんだアイツ。ドア乱暴に閉めすぎだろ。あの音は多分、トイレのドアか洗面所のドアか。ぶっ壊れるんじゃないか。
 考えを巡らせたところで、ここからじゃ詳しい現場の状況は分からない。数秒間静かになった後、誰かと話し始めた。こういう時、頼りになる相手は誰なのか──大方の予想がつく。
「……よお理鶯、銃兎探すの手伝ってくんね? ウチん中にいねぇんだわ。俺が出張してる間に浮気したみてぇでよ。は? バカ言え俺様以上に銃兎に見合う男はいねぇんだよ。死体処理は火貂ですっから。……ほぉ、居場所探知ねぇ。前に俺様が頼んどいたやつか? よくアイツに付けられたじゃねぇか。にしても、あのウサちゃんよっぽど俺様にお仕置きされてぇんだなァ。…………ヘッ、そりゃするに決まってんだろ。クソ野郎の骨折って動けなくしてからよぉ、銃兎のスーツひん剥く。んでウサちゃん素っ裸にして目の前で大股開かせて俺様がブチ犯してやんだよ……つかンなことよりあんまり俺様を待たせんなや、こうしてる間にも銃兎に汚ねぇ手垢ついちまうだろ。場所分かったのか? んで銃兎は……ア? 家ん中?!……ハハッ! 分ァったじゃあなサンキュ」
 サプライズしかけてやろうと思って隠れてたのに、失敗したらしい。居場所探知してくるなんて反則じゃねぇか。理鶯はいつの間にそんなモン付けやがったんだ。あとお前はそんなモン頼むんじゃねぇよ、お陰で理鶯が本気にしちまっただろ。浮気なんて俺がするわけねぇの知ってるくせに。
みるみる近づいてくる足音。スイっと開けられたクローゼットの扉。照明の光が差し込む。二週間ぶりに会った左馬刻は、やっぱり世界で一番格好良かった。眩しいくらいだ。いやそれ暗いとこに居たから目が慣れてないせいだろとか思ったやつはしょっぴく。
「おかえり。物騒なんだよ俺様ヤクザ」
「ただいま。焦らせんなや悪徳ウサ公」
「物に当たんなって合歓ちゃんに怒られるぞ。次会った時に言いつけてやろうかな。週末でしたっけ?」
「勘弁しろや合歓の奴すぐ銃兎の味方すんだから……つか銃兎が俺の横にいねぇのが悪いんだろ。隠れんぼすんじゃねぇよ。銃兎いねぇと駄目んなるって言ったじゃねぇか俺」
「ふふ、ちょっとビックリさせたくて……ごめんな左馬刻。ソファは無事なのか?」
「銃兎アレ気に入ってたもんな。テーブルも無事だわ。トイレのドアは閉まんなくなったけどよ」
「開放的だな……」
 サプライズには失敗したけど、まあいいか。ソファとテーブルが無事なら、久々に二人で食べる夕飯も美味しく頂けそうだ。


ただいまとおかえりを言わせて


2021/10/02 10:22
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -