なまえは離れていった。俺の体を押し返して。エレンと二人で離れていくなまえを追いかける事なんて出来なかった。
「なまえ…。」
「追いかけた方がいいと思うよ。」
ハンジが後ろから歩いてきて言った。
「君は許された訳じゃないんだから。」
「…わかってる。」
だけど追いかけられないんだ。先ほどの事を思い出す。初めてあんなに怒ったなまえを見た。いつもにこにこ笑って、馬鹿で、俺のことが大好きで。
「今更気づいた。」
俺何やってんだ。あいつは、なまえはこんなにも俺を好きでいてくれたのに。俺は自分の事しか考えていなかった。
「だとしても、追いかけるべきだと思うけどね。」
今すぐなまえに会いたくなった。

電話をかけても電源を切っているのか繋がらない。舌打ちをしてなまえを探すことに専念する。
いねえ、どこにもいねえ。ちゃんと謝りたいんだ。さっきのように言い訳をするつもりじゃない。ちゃんと自分の事を伝えたい。柄にもなくそう思った。なまえが好きだって。
ちゃんと言いたい。
「!なまえ…!」
やっとみつけた。言える。やっと、
「俺、なまえさんが好きなんです。俺ならなまえさんを幸せにできるから。」
目の前で繰り広げられる光景をまだ信じられない。なまえを抱き締めるエレン。好き。俺にはどうしても伝えるのが難しかった二文字。
それをいとも簡単に伝えた。ここからはなまえの顔は見えない。しかしこのあとどうするかなんて今の俺には一瞬で想像できた。そりゃ、エレンの方がいいよな。こんな浮気なんてする男より、素直に気持ちを伝える奴の方がいいに決まっている。俺だってそうだ。もしも俺がなまえの立場だったら。そう考えると、なまえの次の行動はおのずと想像できた。
聞きたくない。なまえが他の男に好きだと伝えるのはどうしても聞きたくない。
「お前も、こんな気持ちだったのかなまえ。」
苦しくて胸が締め付けられる。ごめんななまえ。やっとお前の気持ちが分かった。そして気づいた、俺はお前の側にいるべきじゃない。
昔誰かが言っていた気がする。自分の犯した罪は必ず自分に返ってくると。
「まさにその通りだな。」
そっと呟くとその場をそっと後にした。


0704



mae tugi

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