あれから二年経っていた。俺は就職してやっと暮らしも安定して。なのに、馬鹿みたいにまだなまえを好きだった。そんな中、今では同僚となったハンジが息をきらし俺に一枚の紙を押しつけてきた。
紙を持つ手は小刻みに震えた。ハンジも泣きそうな、でも嬉しそうな。よく分からない顔をしている。
「なまえたち、結婚するって。」

会場では皆浮かれたように騒いでいる。見知った顔をいくつも見つけた。
ああ、アイツ等は結局結婚することになったのか。まだ、続いていたのか。言いたいことは沢山あって未だに整理がつけられない。
あのあと俺にも招待状は届いていて俺を絶望に追いやるのにそうそう時間はかからなかった筈だ。どうやらエレンが招待したらしい。このことをなまえは知っているかは知らない。
「リヴァイ、こっちきて!」
柄にも無く落ち込んでいた俺をハンジは引っ張り出し駆け出す。はしたない。
「お、前なあ…。」
「ここ、あけてごらんよ。」
ため息をつきながらしぶしぶドアを開ける。ハッと息をのんだ。心臓がこれでもかと言うくらいドキドキと音をたてている。
「なまえ…?」
「リヴァイ、久しぶり。」
私は、出るね。そう言ってハンジは出て行く。気を利かせたのだろう。それにしても真っ白なドレスがなまえに良く似合っていた。
「久しぶりだな…。」
「なんとなく、リヴァイに会える気がしてた。」
そうかよ。そう言って下を向く。お前は今日、エレンの物になるんだな。もう俺の手が二度と届かないところに行ってしまう。
「なあ、なまえよ。」
「なあに?」
「俺が浮気をしなければ、お前はずっと俺の隣で笑っていてくれたか?」
なまえは一瞬キョトンとしたがすぐに悲しげな瞳をして俺を見つめた。
「ずっといたよ。」
「…そうか。」
馬鹿なことをしたものだ。本当に、取り返しのつかないことだった。
「なあ、なまえ。」
「…なあに?」
なまえは目に涙を溜めていた。馬鹿が。せっかくの化粧が台無しだ。
「好きだった。」
「…アタシも。」
どうしてこんな事になったんだろうな。こんなにも好きだったのに、近くにいたのに、もう届かない。
「私はもうエレンの物だから。エレンが好きだから。」
まるで自分に言い聞かせるようになまえ繰り返した。
まだ指輪のはまっていない左手を掴む。びくりと体が揺れ俺を見つめたなまえはひどく儚げで、胸が苦しくなった。なぜ、俺はコイツの手を離してしまったのだろうか。こうなると知っていたならもっと大切にしていただろうに。まあ、今更何もかも遅いがな。
「幸せになれ。」
「…リヴァイも。」
手が離れて背を向ける。じゃあななまえ。愛してた。
「さよなら、リヴァイ。」
小さな呟きはドアの音に阻まれてもう何も聞こえない。


式が始まり笑顔の二人は見るからに幸せそうだった。二人は幸せになったのだ。なまえのこともエレンだから許せると思える。守ってくれるだろう。
不意になまえと目が合った気がした。一瞬顔が歪んだがまたすぐ戻った。もうそんな顔すんな。お前は幸せになれ。お前なら大丈夫だ。安心しろよ。ほら、薬指のシルバーリングが俺をあざ笑うかのように静かに光ってる。



0707 (終)



mae tugi

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