「…はい。」
「もしもし…。」
さっきまで聞いてたはずの声がひどく懐かしく感じた。伝えたいことは沢山ある。だけど、彼の言葉を聞いた瞬間に全て吹き飛んだ。
「あ、あの。」
「…何も用がないなら切る。」
え?
「ち、違うの、その今日のことで。」
「ああ、俺も話したかった。家に帰って冷静に考えたんだが…」
──やはり、お前のことはもう好きではない。
「…へ。」
危うくまたスマホを落とすところだった。いや、それはどうでもいい。私、今なんて言われたの。
「だから、やっぱり別れよう。いや、別れてくれ。」
目の前が真っ暗になるって言うのはこういうことなのだろうか。段々と状況が理解できてきた。もやのかかった脳味噌が漸く覚醒してきた。
「どう…して。」
「よくよく考えたらお前胸もねえし、うるせえし。あっちの女のが良かったよ。」
あっちの女のが良かった?あっちの女って浮気してた子?私より、私は。
「もう好きじゃねえんだよ。」
「そ、そっか、あは…。」
これ以上用がねえなら切るぞ。
──プツン
一方的に切られた通話。ポトンとベッドの上にスマホを落とす。体育座りをしながら画面の真っ暗なスマホを見つめた。
「やっぱ、好きなのはアタシ、だけだった。ふふ…」
スマホの画面に水滴がポツポツと落ちていった。



▽▲
通話の終わった携帯をテーブルに置く。暫く真っ暗な画面を見つめ、ため息をついて天井を見上げた。何やってんだ俺は。確かに側にはいられないと思った。でもなまえを嫌いになったわけではない。寧ろ好きなんだ。好きだからこそ、なぜあのような言い方しか出来なかったのだろうかと胸が痛い。
「あいつ、最後に笑ってたな…。」
思えば余り自分の悩みを吐き出さない女だった。ため込んでため込んで一人で悩む。そういう女だったのだなまえは。エレンといたなまえの顔を思い出した。俺なんかといるよりエレンの奴に幸せにしてもらえばいい。俺にはどうせ幸せには出来ないのだから。
「なまえ…。」
呟いた言葉は天井に吸い込まれていった。




△▼
次の日なまえは学校にこなかった。
「エレーン!なまえ知らない?」
「え、いや…知りません…。」
エレンが気まずそうに目を伏せた。エレンがなまえを好きなのは知っている。そのエレンが気まずそうに目を伏せたということは何かしらエレンも関係しているのだろう。
「俺、なまえさんに好きって…言ってしまいました。」
「おお〜!それでそれで?!」
エレンはこちらを見ると苦笑した。まるで、察してください。と言うように。
「フられちゃいました。リヴァイさんが、まだ好きって。俺、絶対になまえさんを困らせた…」
よしよし。私がエレンを慰めてやろう。それにしてもリヴァイは罪な男だ。こんなにも自分を愛してくれる女を裏切るなんてね。普通それでも好きなんて言わないけどね。
噂をすればなんとやら。リヴァイがこちらに向かってくるのが見えた。


mae tugi

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