松6


フッ、元気でいるかい?カラ松ガールズ。
俺は松野家の次男に生まれし、松野カラ松。静寂と孤独を愛するギルトガイ。
血を分けし我が兄弟は定めし試練をこなす為、紅き光が世界を染める時にならなければ姿を表さん。
え、そんなことより働け?フッ…まだその時じゃ無いのさ。

働かない我が人生、セラヴィ!

※セラヴィを直訳すると『人生なんてこんなもんさ!』『なんとかなるさ!』良い意味でも悪い意味でも使わるよ!

居間で愛用している鏡に映る自分の姿に酔いしれていると誰かが帰ってきたらしい。玄関の引き戸が開かれる音が聞こえた。

「チョロ松、大丈夫?」

「平気、温かくしてれば大丈夫だよ」

声はマミーとチョロ松だ。どうやらマイブラザーの一人であるチョロ松は腹痛のようだ。
俺を含めた兄弟の中でもチョロ松はお腹を壊しやすいし、体調を崩しやすい。いや、それでも小さい頃に比べれば大分マシになったが。

「あれ、カラ松いたの?」

「おかえり、マイブラザー。俺は松野家の次男…この砦を護る選ばれし者…」

「要するに出掛ける用事がなくてずっと家にいたってことだよね?」

居間に入ってきたチョロ松の表情は優れてなく、少しでも痛みが和らぐようにか、お腹を摩っている。

「また腹でも痛むのか?」

「…うん」

お腹を温めるためか、ショルダーバッグを抱えるように座る。いつもなら洗面所で手洗いうがいをして、出掛けている時に使っているショルダーバッグを一旦部屋に置きにいってから居間に来る几帳面な弟がだ。長い?気にするな。今回は辛いらしい。口数も少ない。

「…大丈夫か、チョロ松?」

「だいじょばない…」

段々とチョロ松の顔色が悪くなる。そんな弟を見るのも辛い。どうしようか…。

「ちょっと待っていてくれ」

鏡を机に置き立ち上がる俺を見るチョロ松が何だか不安そうに見えたが、このままでいても悪化するだけだ。
待ってろブラザー、この俺が毒を浄化するアイテムを手に入れてくるからな!!

「…フッ。待たせたな、マイブラザー」

「いや、別に待ってないけど」

マグカップとタオルケットを持って再び現れた俺にそう冷たく返すチョロ松はショルダーバッグを隅に置いて、座布団を二つ折りにして抱いている弟に、 黄金に輝く欠片が散りばめられし山吹色に染まる雫…いや、つまりインスタントのコーンスープが入ったマグカップを差し出す。
まぁ、何も無いよりはいいと思う。

「熱いから気を付けろよ?」

「…ん」

俺からマグカップを受け取ると息を吹き掛けながら少しずつ飲む弟に近付くと、後ろから抱き締めてタオルケットを掛けてやる。
これならスープを飲んだ後も冷めないし温かいだろう。

「これもし僕が女だったら間違いなくセクハラだよね」

「でも兄妹だったら別に平気じゃないか?」

それもそうだねと呟くように言った後、弟はゆっくりとスープを飲んでいく。痛みが和らぐようにタオルケットの上からそっとお腹を撫でてやる。スープの温かさに安心するのか、チョロ松はマグカップから口を離すとほぅ、と息をついた。
それにさっきよりも顔色が少し良くなっている。

「…カラ松」

「ん?どうした?」

まだ痛むのだろうかと思って後ろから覗き込むように顔を見ると、柔らかい笑顔を俺に見せた。

「ありがとう、カラ松」

「!?チョロ松、その笑顔と共にもう一度言ってくれ!」

「え、…もう言わないよ」





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