凍えた声は音になっただろうか。なんとも言えない掠れた声だったかもしれない。音なんて出ていなかったかもしれない。冷たい身体を抱きしめてこのまま僕も、雪になってしまいたい。

薄い膜を壊すにはどうすればいいのか。答えは簡単だ。膜ごと包みこんでしまえばいい。そうしてしまえば中身も自ずと壊れるだろう。

眼前にはただただ白い雲があった。それとひとり、女がいた。ぱくぱくと口を動かしているように見えるが如何せん音が聞こえない。ただ白い雲と何かを喋っているらしい女のみが自分の見える全てであった。

おかしな事に自分は女を知っている気がした。顔に見覚えはないし名前もわからなかった。ただ、女の何とも言えぬ髪の色だけが自分の脳裏をかすめて何かを燃やしているようだった。


さよならはこれで最後にしよう。そう思って書き始めた文字の羅列は思ったようにはいかなかった。思い出を文字にするのはとことん骨が折れた。そのうち考えるのをやめて、どうにでもなれなどという曖昧な気持ちでいると、いつの間にかペンは紙の端まで来ていた。もはや書くことも書く場所もなくなっていた。

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