これのずっと前



「……」
「……何見てんだよ。金取んぞ」
「あなたが甚爾さん?」
「誰だオマエ」
「たぶん言っても分からないよ。私、落ちこぼれでほとんど外出たことないから」
「……あー、オマエ、分家のヤツだな」
「!何で分かるの!?」
「前にウチ来たことあるだろ。あの時はまだガキだったが」
「よく覚えてるね」
「女の顔は忘れねぇんだよ」
「ふーん……?」
「で、何だ?自分より下の人間を見て笑いに来たのか?」
「なっ……そんなんじゃない!というか、どう考えたって甚爾さんの方が強いでしょ」
「強いっつーのは否定しねぇが……オマエ呪力あるだろ」
「呪力はあるけど術式はサッパリなの。ただ呪霊が見えるパンピーと同じ」
「クク……そりゃ禪院での扱いはさぞヒデーだろうな」
「…………まあね。お察しのとおりですよ」
「……何勝手に泣きそうになってんだよ」
「あたっ!ちょ、デコピンやめ……」
「ウゼェ。俺が泣かしたみてーだろうが」
「ヒドい……」
「……」
「わっ、え、どこ行くの!?」
「騒ぐな。黙ってついてこい」
「ええ……?……というか、手」
「オマエにとっておきの場所を教えてやるよ」


(……『とっておき』ってここ?裏庭?)
(ああ。女は大抵花を見せれば泣きやむだろ)
(なんかそう言われるとシャクだな……)
(泣きやんだくせにグダグダ言うんじゃねぇ)
(……)
(……何見てんだよ)
(私の家の女中がね、本家にイケメンがいるって噂してたの。たぶん甚爾さんのことだと思うんだけど)
(誰だソイツ。見る目あるじゃねぇか)
(自己肯定感がすごいな)
(それで?実物はどうよ)
(……かっこいい。けど口が悪い)
(ハハッ!俺がオマエを口説く気になったら、もっと優しくしてやるよ)


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