「君は、自分がこの世界の主役だと思ったことはあるかい?」
「……まぁ。小さかった頃は」
「逆に自分が世界の端役だと感じたことは?」
「そんなのたくさんあるよ。だって私たちの同期、皆主役張るくらい優秀じゃない」
「なんたって『最強』がいるからね」
「私は夏油も含めて言ってるんだけど」
「ハハ、それは光栄だな」
「……どうして」
「ん?」
「どうして私を連れていってくれなかったの?」
「だって君は猿を殺す気ないだろう」
「私が、あなたのこと好きだって」
「知ってるさ」
「なら利用すれば良かったのに」
「自分に利用されるだけの価値があると?」
「……」
「あっはっは!そんな泣きそうな顔しないでくれよ。冗談、君は優秀な呪術師だ」
「……いっそ殺してくれれば良かったのに」
「私には君を殺す理由がない」
「後で夏油の邪魔するかもしれないのに?」
「無いね。君は私のことが好きなんだから」
「……好きだから、止めるんじゃない」
「君は私に勝てないよ」
「そんなこと知ってる」
「……悟が来るのか?」
「来ないよ。今日は一人。私は……明日の配置から外されたから」
「……ああ、そういう…………あのバカ、裏目に出てるじゃないか」
「?何か」
「いいや。せっかく拾ってもらった命を無駄にしてるなと思ってね」
「それは夏油の方だよ」
「私の大義は勝つさ」
「……ねぇ」
「何だい?」
「今から私は全力で夏油を止めるけど、きっと殺されちゃうから言っておくね 」
「……は、」
「好きだよ。昔も今も、これからも」
「……」
「ふっ、何その変な顔」
「……悟が昔、『愛ほど歪んだ呪いはない』なんてクサいこと言ってたのを思い出したよ」
「あはは!私の方がよっぽど呪詛師だ」
「嫌な呪いをかけてくれるね」
「……私も、呪いにかかってるようなものだよ。あなたのこと、最後まで嫌いになれなかった」
「それはお互いさまだろ」
「…………ずるいなぁ」
「来世では私が迎えに行くよ。だから」

今はせめて、私の手で安らかに逝ってくれ。


ーーーーーー
2017年12月23日 百鬼夜行前夜の記録


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -