「夏油くんの事が好きすぎて、どうしたら良いかわからない、………」

うまれてはじめての告白は愛からは程遠く謝罪のような言葉となってしまった。

夏油くんを見つめ静かに涙を流し続けるわたしを、彼ははぐらかすでも慰めるでもなく真面目な顔で黙って見つめ返してくれた。

昔から喜怒哀楽の感情が限界まで達するとわたしは自然と涙が落ちてしまう。悲しいわけではないのに悲しむようにただつらつらと涙を落としすわたしは、今、何の感情が限界まで達しているというのだろう。恥ずかしいのだろうか。怖いのだろうか。どちらも違った。恥ずかしくも怖くもなかった。好きが限界まで達して、言葉通りどうしたら良いかわからない結果の涙なのだ。

「知ってたよ」

夏油くんか静かに告げた。ああ、そうなんだ。見透かされてたんだ、とわたしは小さく笑ってしまった。でも夏油くんはいつもと違ってわたしと一緒に笑ってくれない。夏油くんの表情からは何も読み取れない。眉間に少しだけ皺を寄せて、難しい顔をしている。自分自身で笑みが消える瞬間がわかり心が冷えた。わたしたち、どうなるんだろう。

「うん…うん……」

夏油くんが独り言のようにそう呟きながら小さく何度か頷く。なかった事に、してしまおうか。返事はいらないからって、言いたかっただけだからって、これからも仲良くしてねって、心の中でたくさんの逃げの言葉を準備する。わたしが口を開く前に夏油くんが告げた。

「私達、付き合おうか」

その瞬間、夏油くんはわたしの事なんてちっとも好きじゃないんだな、という事がわかった。わかってしまった。

「うん……」

でも、それと同時にどうしても夏油くんを独り占めにしたいというわたしの感情にも気付いてしまった。だから気付かないふりをして、頷く。夏油くんの慈しみのような優しさに甘える。悲しくなって、涙がぼろぼろと落ちてきた。両手で顔を覆い俯けば、夏油くんがそっとわたしに歩み寄りわたしの背中を撫でる。

それは友達の時と何も変わらない掌で、でもどうしても離したくなくて、好きで、でも夏油くんはわたしの事を特別に思ってくれていなくて、優しいだけで、どうしたら良いかわからなくて、わたしはもっと泣いてしまった。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -