「二人とも、着きましたよ!」

補助監督の声でパチリと目が覚めた。重い瞼をこすり窓の外を見ると、そこはもうすっかり見慣れた高専の敷地内である。二週間、本当におつかれさまでした。運転席から掛けられた労いの言葉を合図に、私と七海は身の回りの荷物を片付け、ずいぶんお世話になった補助監督に何度もお礼を言いながら車を降りた。

「報告書なんかの書類は、明日で大丈夫ですからね」

去り際、補助監督がやけに親切な声でそう言い残していったのが少し気になった。私たち、そんなに疲れた顔をしていただろうか?……いや本当に冗談抜きで疲れ切ってはいるんだけど。さすがに二週間、見知らぬ土地で、あまり多くもない情報をツテに呪霊を探し祓いつづける日々は、よく知る同期が一緒とはいえ精神的にも肉体的にも辛かった。
その場に立ち尽くしたまま、隣を見上げる。七海も同じことを考えていたのか、同じタイミングでこちらを見たのでバッチリ目が合った。その数秒後……また同じタイミングで、二人同時にぷっと噴き出す。

「あはは!七海、ゾンビみたいな顔してる!」
「名前の方こそ……さっきやけに気を遣われた理由が分かりましたよ」
「確かに。私たち、よっぽど酷い顔してたんだろうね」
「ええ」

七海の疲れた顔にふと笑みが浮かんで、目尻に皺が浮かぶのがかわいかった。かわいいと思ったらいつの間にか体が動いていて、ああ疲れすぎて行動力まで馬鹿になっているなぁ、と頭の隅で思う。ぎゅっと彼の背中に手を回して抱きしめたら、ずっと張りつめていた気持ちが緩んでちょっと泣きそうになった。「おつかれさまでした」言って、抱きしめ返してくれた手があんまり温かかったから、ここに帰ってこれてよかった、と心から思った。

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