性急に服を脱ぎ捨てていく姿を、めずらしい、と思いながらぼんやり見上げていたら「何をじっと見てるんですか」とバツの悪そうな顔で言われた。そんなに急がなくても逃げないよ、なんて笑えば、七海はなぜだか不満げに眉を顰めてがぶりと私の唇に噛みつく。

肌をあわせるのは気持ちがいい、と思う。けれど挿入まで長い時間をかけて胸を弄ったり身体中を舐めたりする必要はないんじゃないか、とも少し思う。そんなに念入りにしなくたって彼を受け入れられるくらいには十分濡れるし、生娘でもないのだから、多少痛みを感じたって続きを拒んだりもしない。膣を割いていく舌の生温かさに脚を震わせながら、もういい、と掠れる声を絞りだせば、ぐっと持ち上げられた股の間から七海が顔を見せた。

「気持ちいいですか?」
「うん、いいから、もう挿れていいよ」
「……アナタ、感じないわけじゃないのにあまり声を出さないですよね」

ぽつりとそう呟いて、七海が右手の人差し指と中指を挿し込めば、すっかり濡れたそこは抵抗なく二本の指を受け入れた。初めはゆっくりと抜き差ししていたのが、だんだん速度を早めて上壁を擦るので、そこからジワジワと快感が上り詰めてくる。ぱちゅぱちゅとやけに部屋に響く水音に隠れるように「ん」とか「あ」とか声にならない声が漏れれば、それを逃すまいというように彼の薄い唇が私の唇を食んだ。…足、限界まで持ち上げられて、痛いな。私がそんなに体柔らかくないこと知ってるくせに。軋む身体に顔を歪めると、七海は何を誤解したのか「これなら聞き漏らさないので、声、出してください」なんて言いながらその長い指でぐっと弱い部分を押す。不意に襲った大きな快感の波に、私はその日初めての絶頂を迎えた。



「私、別に声は我慢してないよ。七海はAVの見すぎだと思う」
「…名前がいるのにそんなもの見ませんよ」

ただ、本当にアナタが気持ちいいのか分からなくて。ベットの端に座り淡々と語る七海の背中を、私は毛布にくるまって寝転がりながら眺めていた。…いつもの調子で気持ちいいだの気持ちよくないだの言われると、なんか面白いんだよなぁ…。ぷぷ、と口元を毛布で覆ったまま笑っていれば、こちらを振り向いた七海が恨めしそうな視線を向けてくる。私は毛布とともにずるずると彼の側まで這い寄ると、シーツの上に投げ出されていたその手を取って指を絡めた。

「濡れてれば気持ちいいってことなんだから、さっさと挿れちゃえばいいのに」
「情緒の欠片もありませんね…。言っておきますが、私はアナタのことを思って」
「…だから、その」
「何です?」
「七海は優しいからさぁ…」
「はあ」
「……恥ずかしいんだってば!一から十まで甘やかされると、気持ちいいけど恥ずかしくて、どうすればいいのか分かんなくなる…」

彼の指の関節をなぞりながら、そんなことをぼそぼそ呟く。正直、私の反応を見ながら触ってくる七海の手つきはいつも優しいし、的確に私の弱いところを突いてくるからとても気持ちがいい。そんなとき、ああ私って大事にされてるんだなぁとか、七海って私のこと大好きなんだなぁとか、そんなことばかり頭に浮かんで無性に恥ずかしくなってしまう。…まぁ要するに、七海に優しくされると私は大層照れてしまって、反応が鈍ってしまうのである。
顔に熱が集まるのを感じながら、そう結論付ければピクリと七海の手が震えた。そろそろと視線を上げていくと、私と繋いでいない方の手で静かに目元を覆う七海の姿が見える。

「…今あまりかわいいこと言わないでくれます?」
「え、勃った?私舐めようか?」
「だから情緒……」

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