「ボス」

「なんだ」




今は傍にいる
でも、いつか離れてしまうのではないかと、ふと不安にかられる時がある
今、まさに、彼が目の前からいなくなる様を想像して、言いようのない不安に押し潰されそうになった



「いや、別に」

「喧嘩売ってんのか」



だが、彼には言わないでおこうと声だけかけてやめた
彼は、不満気に鼻を鳴らして私に向けた視線をまた手元の紙切れに移した
いつも自信に溢れている彼には、到底理解できない情けない気持ちだろうか
やはり口に出さなくて正解だったかもしれないと思い、私もまた報告書という紙切れに視線を移した



「いるの確かめただけ」

「そうか」



二度と会えなくなる日が
顔も見れない、声も聞けない
そんな日が来るかもしれない、明日にでも
こんな不安を抱くのは、それだけ彼を愛している証拠でもあるのだろう



「リサ」

「なに」



黙ってデスクワークに没頭していたら、今度は彼に声をかけられた
先程とは違う少し穏やかな声色だったので、何となく(いろんな意味で)怖くなって怪訝な表情で彼を見つめてしまった



「俺の傍にいるか確かめた」

「真似しないでよ」



なんだ、彼は分かってくれていた
そう思えただけで、くだらない不安は吹き飛んだ
なんて現金な奴だと、さすがに自分でも思った
これが所謂幸せというやつかもしれないと、思わず口元が緩んでしまった



「リサ」

「なに」

「こっちへ来い」




手を差し出せば自然に指を絡め取られ握り返される 不器用な貴方の愛情表現




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -