「……ここでいい…、降ろせ……」

音も立てず隠し戸から暗部の深部に続く通路をひた走る部下の背中で、フーはそう告げた。
部下は背からフーを下ろすと、一礼して消えた。


――仕掛けは成功した。――

もう外は夜が明けるのではないか。今夜は長かった。シカマルから抜け出し自分に戻った時点で、部下に運んでもらう手筈になっていたが、まだ自分の感覚が戻ってきていない。心転身を多用した為であることは分かっていた。

対象をコントロールする為に、他人の中に入った場合、自分の身は誰かに預けなければならず、自分では守りようがない。そういうリスクから、心転身はそう長く続けられる術ではない。探索任務でなく体を乗っ取り精神を支配する場合は、しばらくはその対象として動くのだから緻密なチャクラコントロール以上に集中力が欠かせない。

稀に今回のような任務があるが、この手の任務は遂行しても決まって、情事の後のような高揚感と疲れが身体を包み、しばらくはチャクラが乱れてしまうのだった。
この美青年は気だるそうに壁に寄りかかった。

(…これでとりあえず飛段対策は完了だ。あとは、効果を持続させねばならない…)

フ―は懐に手を入れ、何かを確かめた。それから、通路の闇を足を引きずりながら歩いて行った。




暗部の、二重鍵の、とある病室。

うっすらと光のようなものを感じ、深い深い眠りから引き戻されると、鼓動の音がドク、ドクン、と体に響いた。

男は、胸に手をあて、呟いた。

(……飛段……お前………生きているのか…………?!……)



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