ふいにバシッと頭を叩かれ、シカマルは我に返った。
「……おい!!てめえ!!シカ…!!隊長知らねえかっつってんだろ!?」
飛段はシカマルが離れてからずっとずっとずっと文句を垂れ流して怒鳴っていたのだが、やっとシカマルの耳に届いたようだ。

「…あいつ、演習の時に急に居なくなって帰って来ねえし、気づいたらお前は俺にナニしてくるし、あったま来た!!!お前らまとめて殺してやる!!!」

「……お前が隊長を襲ったんじゃないのか?」
シカマルが問うと、飛段は、
「襲うか、馬鹿。木ノ葉に歯向かってどうするよ!」
と叫んだ。

――居なくなった?飛段が隊長を襲った訳ではないのか?あの隊長の面や靴は、偽装だったのか?
仮に、それが事実とすれば、隊長が俺に心転身を仕掛ける準備は余裕で出来る。

「……くそッ……クソッ………!!…くっ……そぉ……!!!何の、……何の為に…??!」

拳で床を叩かずにはいられなかった。隊長に裏切られた感じが耐えられなかった。

――仕掛けたのがフーだとしたらどうなのだ。独断で仕掛けたのだろうか。……いや…。命令を下したのはダンゾウか?奴の思想は歪んでいるが、一貫して木ノ葉の為に動くと思っていた。
…いや、その木ノ葉の為に、という大義名分が厄介なのだ。その為ならば人を操り、人を消すことなど厭わない、強行手段に出る実力派なのだから――。

ダンゾウだとしても……俺を飛段に向かわせる意味が分からない。
それも殺し合うならまだしも、体を……。

ふと、フーが言っていた 『飛段に禁術を施す』という言葉を思い出した。
俺の役目だと…言っていたが。あれから何も、指示は受けていない。この入院が終わったら聞こうと思っていたのに。禁術を施さなければ、離反した飛段に殺される、とも聞いた。

ダンゾウと、フーを疑うならば、仲間だと信じているサイも……サポートしていたかもしれない。

(…誰も……自分以外誰も信じられねえ……)

シカマルは肩を落とし、怒りと諦めの表情で、後ろから文句を言いつつ足を引き摺り、シカマルと同じく闇に目を凝らしている飛段を返り見た。




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