夜中、物音が聞こえ、シカマルは夢から覚めた。耳を澄ますと、確かに飛段の病室から聞こえるようだ。唸り声と金属音が立て続けにして、なんとなく嫌な予感がした。サイは居ない。フーの小隊に配属されてからはシカマルの護衛も解け、心配はしても付き添う訳にも行かず帰ったのだろう。シカマルはそっと病室を抜け出し、隣のドアに近づいた。鍵は開いていた。

――!――。

病室の薄暗い明かりに照らされ、真っ先に目に飛び込んできたのは、床に、黒く、少しずつ領域を広げている血溜まりだった。
ベッドから床にだらりと垂れた白い足の、アキレス腱のあたりから落ちる、ピッチャ……ピッ…、という微かな音に戦慄を覚える。まだ、血が流れ続けているのだ。
シカマルは吐きそうになった。

徐々に目が慣れて飛段とおぼしき姿がだんだん見えてきた。猿轡をされた口からフー、フーッという息が漏れ、唸り声をあげる奴の上半身は太い鎖でベッドに固定されている。

何故に?
演習で傷ついた箇所の治療を受けたばかりではないのか?それで、夕刻までは自由に病室から出たりしていたではないか。なのに、なぜ腱が切られ、動けないようにされているのか。これも、やはりダンゾウの指図なのか?

暁狩りをやる、と言っておきながら――飛段を遣うことを強引に推し進めておきながら、このような扱いをするとは。飛段が木ノ葉に歯向かうならば制裁する、というのは当然であり、異論はない。だが、不死の飛段を傷つけて拘束するなど、自分から言わせれば、前向きな制裁というよりただの私刑にすぎない。任務効率を上げるどころか、奴に殺人の動機付けをしているとしか言いようがない。
なにしろ奴は死なないのだから。生きて、身に起きたことを覚えているのだから。死への恐怖、生への執着で命令を遵守する普通の捕虜とは訳が違うのだ。

(こいつと組ませられる俺やサイの身になってみろ……!
扱いにくくて、まじ、面倒くせえ。)

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