影縫いが、何本か飛段の足元からズオッと現れた。
それらは鋭く尖り、飛段の頭上から一気に急所めがけて疾る。
容赦なくグザッ、ズブリと、飛段の喉元を割き、両手首を突き破り、心臓を貫いた後、背後の岩に飛段を十字架状に磔にした。その後、もう一回り体に巻き付いて締めたいところだが、もう限界だ。

(チャクラが……足りねえ……)

一対一の状態での影首縛りは、あの時のように対象にトラップを仕掛ける為なら効力を発揮するが、本来サポートありきの策である。
影縫いはSランク任務でも通用する、かなりの殺傷能力がある術だが、こと飛段に対しては致死というより動きを封じる一手でしかない。
拘束した後、瞬身の術など遣えたらいいのだが、
――それでも。自分にはこれしかない。――

術を発動する時に飛段の千本から心臓を庇ったせいで肩を打ち抜かれた。だが、痛みに怯んではいられない。どうしたらいい?!

サイが、居てくれたら……!
鳥に掴ませて飛段を運んでくれたらどんなにいいか。いっそ生きたまま封印してくれてもいい。そんなことを思いながら血だらけの肩で息をしながらシカマルは岩に寄りかかった。拘束だけは、解く訳にはいかない。目が、霞む。

飛段は身動きができない四肢を、力任せに影の杭から解こうともがいた。流血した口許を歪ませ、目に悋気をはらむ様は、まさに死人が生き返ろうと蠢いているようで不気味だ。そのうち、観念したのか、それともシカマルの死にかけの呈を見てか、フハハ、と嘲るように笑ってシカマルに言った。

「…………死なねえと思って……ズタボロにしやがって……。このクソガキ……!
…………なあ、手がやたらヌルヌルすんだけど…口ん中も、かなり……てめえ俺に何かしたのか?
……とりあえず、洗いてえ……!……」

シカマルは、絶句した。


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