突き飛ばされて頭を強打した飛段は、急に視界がはっきりしたのを怪訝に感じた。術にかかっていたような、 頭のモヤモヤとした感覚が覚めて、シカマルに刺された痛みもはっきり感じるようになった。そして、自分のおかれた状況を瞬時に理解した。

シカマルが印を結ぶ刹那、腹這いになっていた飛段は自分の下に、チャリ、と金属音がするのに気がついた。この滝の裏で取り落とした千本だ。それを、手でまさぐり、握った。

なぜ手がそして口の中がヌルッとしているのか分からない。そんなことより影に捕らえられる前に動かなければ!飛段は飛びずさって影分身し、背後に廻った本体は、シカマルめがけて千本を打ち込もうとした。少なくともダメージは与えられる。

(…くそっ…!千本かっ……)

シカマルは歯を食いしばった。

飛段の暁狩りの決意が本気であろうと、それが何だ。
術を幾重にも施して同じ部隊で連携を強めようと、それが何だ。
ここで倒れては意味がない。
千本一つですらヒットすれば待っているのは死だ。

生きなければ…!

シカマルはバッと印を結び変えた。影が、疾った。


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