超獣は消え去り、滝の音だけがゴーッと聞こえる。シカマルは気を失った飛段と二人、取り残された。消える前に、超獣とサイのコンタクトが取れていればいいのだが。もし、音信不通でサイの助けが無いとすると、この男を演習場まで運ぶのは自分しかいないということになる。かなり面倒臭い。

(俺を殺すのはもう少し後だと言っていたが、そのリミットが分からない。ましてや運んでいる間に時間切れになって、逆に血を採られるのもごめんだ。)
シカマルは飛段の口を封じる為の、猿轡になる長い布か、紐がないか探した。
(…あっ。)
飛段が着けている両腕のアームスリーブを繋げればうまく行きそうだ、と気づいたシカマルは、腕から布地を引き抜き、繋いだ結び目を口に噛ませるようにして、首の後ろで固く縛った。そういえば暗部のポーチの中には捕縛用の紐が入っていたのだ、と今更のように思い出し、さらに印が組めないように両手を縛ろうと紐を飛段の手首にかけた刹那、紐がヒュンと唸りシカマルの目を掠めた。
(…ちっ!目覚めやがっ…、)
避けそこねてバランスを崩したシカマルは、下腹部に飛段の膝蹴りがまともに入って目の前がチカチカした。倒れて甲冑越しに背中を岩盤で打ち、左目の上まぶたは紐の攻撃でヒリヒリ熱い。さらに馬乗りになった飛段の拳が容赦なく頬にヒットし、シカマルはグホッと血を吐いた。動けずにいると右手の指を紐でがんじがらめに縛られるのを感じた。
(…く…そっ…!)
飛段は、血だらけの手で猿轡をグイと強引に緩め、不敵な面構えでシカマルを上から見下ろした。その眼は妖しく光っている。この後アッパーを顎に食らって気を失うシカマルが覚えているのは、その殺気立った、けれど不謹慎を承知でいうと、恐ろしく色気のある飛段の顔だけだった。シカマルは本能的に身の危険を感じた。その顔から目を離せずにいると、口許を少し歪めて笑った飛段の右手が、ツーッとシカマルの下半身に流れ、ピタッと敏感な所で止まった。
顎に激しい衝撃が走り、シカマルは気を失った。

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