「…ハア〜!?……これだから素人はッ!!」
飛段は口許を手で拭い、シカマルを睨んだが、今度はイライラしたように手を頭に当てて冗談じゃねえ!!と怒鳴った。薄暗い中で見る飛段の、口から血、目には怒りという様はかなり不気味で、シカマルは後退りした。
「………俺は死なねえッつってんだろ!?…この無神論者めが…!」
飛段は滝の流れに手をバッと突っ込んで口を洗い、ついでに顔を洗って言葉を続けた。
「貴様戒律も知らねえくせに分かったような口を聞くんじゃねえ!!
配属されてからこっち、貴様の恨みがましい態度は大目に見てやったが、もううんざりだぜ!ちょっと忍としての躾をしてやろうかと…この折角のチャンスをなあ、またてめえの才覚とかで切り抜けられちゃ面白くねえんだよ!!」
飛段は一気に言って、ちょっと舌を出して傷を点検した。飛段の舌の血はもう止まっていて、黒く傷跡が残る程度で、死の可能性の欠片もなかった。
『自分は死なない』と言う飛段に、不死の謎解きが振り出しに戻ったのをシカマルは感じていた。
「俺は暁を殺ると決めた!俺の意思で、だ。」
飛段は言い放った。
「だからてめえも余計なこと考えずに任務遂行しろ!残念ながらこうなっちゃ、てめえを殺すにはもう少し時間がかかる。命拾いしたなあ、シカマル!…ったくイライラさせるガキだぜ!」
そう飛段が締め括った時、滝の中から白く大きな蛙が数匹、ブワアアッと水を弾きながら現れた。
(サイの超獣だ!)
シカマルは先程飛段が飛び退いた時に落としたクナイをサッと拾い、ホルダーに仕舞いながら蛙に近づいた。飛段が何か叫んだので見ると、すでに蛙に捕獲され身動きが取れなくなっていた。シカマルは自分も蛙に乗ろうとした。
しかし急に飛段の蛙を除いた他の蛙が煙と化し、シカマルは完全に肩透かしを食らった。そして飛段は誰かの目がどこからかじっと自分を見るのを感じた。不審に思いながらもそれに目を合わせた途端、飛段は気を失った。


――演習の前日。皆が寝静まった夜更け、ダンゾウの居室に二つの影があった。それはシカマルやサイと一緒に洞窟に在るはずの隊長の分身と、ダンゾウだった。
「…明日から演習だな。」
「……はい。必ず成功させます。」
「…抜かりなく頼むぞ。お前の心転身でな。」
二言三言、言葉を交わした後、フ―は姿をくらまし、ダンゾウは蝋燭を吹き消した。

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