シカマルはフーが飛段に話しかけているのを無視して寝不足気味の目で演習メニューをチェックした。

アスマが逝ったあの日から、シカマルは深い眠りにつけなくなっていた。夜通し飛段を倒す策を模索し、任務でようやく追い詰め、そして暗部へ…。いつ寝たか分からない日々の連続。こんな演習は朝飯前だが、最後に飛段に血を渡すのが一番厄介な気がした。
奴はこの戦略に従うのか?もとより、木ノ葉に従うのか?
それよりも自分の方がこの戦略を本当に受け入れられるかも疑問だ。暁討伐はやる、と言った気持ちに嘘はない。だが…。そこまで考えた時、隊長がこちらに来るのが見えた。山中一族だけあって、部下の精神状態の把握にかけてはかなり鋭いように思えた。
フーは、シカマルとサイの方に歩いてきて、
「…飛段のことだが。」と言った。
「…奴はダンゾウ様の命により木ノ葉サイドを襲えない。術の縛りが効いているのだ。ついでに言うと、もう一人の角都という奴の延命治療の為にも奴は木ノ葉を裏切れない。不安を感じずに淡々と任務に専念してもらいたい。」
それだけ言うとフーはまた飛段の側に戻った。
(…不安を感じずに、だと。術と脅しでも足りずに、飛段に禁術をかけたかったんじゃねえのかよ。)
昨日、フーはあれ以上議論を続けることをしなかった。結局禁術についてもその後指示はなく、夜は忍具の手入れや簡単な夕飯を取り、交代で睡眠をとったのだった。

おもむろに巻物を広げながらサイが口を開いた。
「…シカマル。暁の目的の一つは尾獣狩りだ。このまま奴等を野放しにする訳にはいかない。…僕達は今出来ることをやろう。木ノ葉を…、ナルトを護る為に。」
シカマルはサイの言葉に思わずサイを見つめたが、すぐに頷いた。戦略に不服があっても、目的さえ見失わなければ、その思いの強さで克服できる。
――ナルトの為に。――
シカマルは影縫いの一部分にカプセルを持たせるようチャクラコントロールを始めた。
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