弔いの鐘が鳴っている。誰のだろう。
風の中、飛段は鐘の音を頼りに細く白い道を歩いた。自分の胸や腕に包帯が巻かれていて、血が滲んでいるのにしばらくして気づいた。
おかしいな、俺なら包帯なんかいらねえ、角都が縫ってくれれば大丈夫なのに。そう思って歩くうち、何度か見た夢の結末に突然気づき、足元が崩れるような感覚に襲われる。
知っているではないか。これは、角都の弔いの鐘なのだ。
この道を歩いて行くと、小高い丘があり、そこに角都が葬られるのだ。
彼は、封印され静かに運ばれて行く。それに気づいて飛段は必死に走り出す。
そこで奴に会うのだ。黒髪の、あの天敵の男に。
墓に花を捧げ、涙に濡れた瞳で墓石にすがる自分の後ろで、その木ノ葉の影術遣いが伏し目がちに控えているというシーンを、まるで映画を観るように傍観する。そういう風にこの悪夢の筋書が決まっている。
茫然自失の自分に奴が何か話しかけているようだが、分からない。
その男の結えた黒髪は緩み、忍服は汚れ、あちこち負傷している。二人とも戦争の最中であるような出で立ちだ。
こちらで見ている自分が何か言葉を発すると、その映像は砂絵のように風に消え去る。知らぬ間に深い眠りについた自分が、しばらくして目を覚ますと、また風の中に居て弔いの鐘が鳴るのを聞く。
飛段はダンゾウの、辛い、遅効性幻術の中に囚われていた。
金縛りに合ったように動けない。そのままダンゾウの部下たちに担がれ、別室へと連れて行かれた。
その頃、シカマルの元には火影より伝令が来ていた。
「…火影より伝令です。至急火影室に来るように、とのことです。」
シカマルはのそっとベッドから降りて、洗面所に向かった。
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