看護士は点滴の袋を取り替えようとして、その袋を取り落とした。たった今、この建物のどこかの病室から、誰かの断末魔とおぼしき絶叫が風に乗って聞こえてきたからだ。気を取り直して点滴を新しいものに変えると、この部屋の忍の様子に変化がないか、点検した。

大体、この男は心臓を5つも持っていたというではないか。それを維持し使いこなせるとは…。常人の自分のような忍には、とうてい理解できない能力だ。

ここに運ばれ実験や解剖に回される忍は、大抵他里の死忍だが、息があって運ばれてきたのはあのバラバラになっていた男と、この男の二人だけだ。今だに息はしており、眠り続けているが、医療班員たちの会話を又聞きしたところ、細胞レベルで経絡系が破壊されており、延命措置もどこまで効くのか分からない、という話だった。

看護士は辺りを警戒しながら、鍵を二重にかけ、そして部屋を離れた。



一方、根の使者が飛段の担当医にダンゾウの命を伝える為、病室の扉を開けた。

「…これは!!…」

血の匂いが充満している。何があったのか、こと切れて俯せに倒れた医師の血が、床に散らばった禁書を染めている。診察台の下では、飛段が微動だにせず、目を開けたまま倒れている。胸には太い千本が何本も突き刺さっている。
死んでいるのか、生きているのか、分からない。

惨劇を目の当たりにした使者は警報を鳴らした。


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