風の唸りが換気孔から漏れてくる。

その風音を遮るように、鎖に繋がれた手足をガチャつかせ、診察台で呻いている男がいた。処方薬の拒否反応なのか、それとも先程かけられた服従の術の後遺症なのか。
この男の術属性が何か、ということもはっきりとは分からない。木ノ葉や近隣の他里では見たことのない不気味な術を遣う。
ただ、今分かっているのは調子がすこぶる悪い、ということだけだ。

白い額に汗が光り、目は血走り、苦しげに咳をする。時折、喚きたてるが、その形相が常軌を逸していて恐ろしい。

「…クソッ!………この、ヤブ医者ぁ!!………俺の体に何しやがった……!」
「…な、何も……治療ですから……」

暗部の医師は震え上がった。
(ダンゾウ様が改造許可して下さったのはいいが、これでは…!)

大体、死なない体であるだけで充分ではないか。忍としては得難い能力だ。ただ、それを木ノ葉の役に立たせなければならない。暁を狩り、戦闘中に木ノ葉の者を殺めないためにも、洗脳は必要なのだ。洗脳するための薬――麻酔薬を注射する前の軽い麻痺剤だが――を飲ませただけなのに。

「…アレ…ルギーだ……!」
絞り出すような声で飛段は言った。

「…俺はジャシン…ゲホッ…!ゲホ…体は……禁術…。何度も……ケホッ…マトモな…薬…効か……」

途切れ途切れに言う言葉も、意味不明だ。こいつの洗脳、改造は医師では無理だ。普通の忍ではない。

医師は飛段から離れて、茶を飲んで一息ついた。ダンゾウ様の命で休みなく働きすぎだ。

――ジャシン…!…マトモな薬が…効かない、と言っているのか!?――
医師はハッとして飛段を見た。
確かに、禁術を施してあるとしか思えない体だ。マトモな薬ではなく、ダイレクトに禁術なら合うというのか?
それにこいつはジャシン教とかいうものを信仰しているらしい。そのあたりから攻めてみるか。

医師は茶を飲み干して、何やら書物を取り出した。


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