シカマルは夜中にふと目を覚ました。カカシの千鳥を流されたせいで体がひどくだるい。多分自分は、荒療治が終わってすぐ、寝てしまったのだろう。
部屋には月明かりが青く差し込んでいた。涼しい風がどこからか入ってくる。窓の側に誰かが座っているのが見え、一瞬身構えたが、それはサイだった。まだ、ここに居てくれたのか。
シカマルが起き上がると、サイは笑って、
「火影命令でここにいるんだ。君は安心して寝てればいいのに」
と言った。
「…ああ、すまねえ。」シカマルは答えた。
任務終了から今まで、自分のことで精一杯だったが、そういえばサイと最初に遭遇した時は、相当怪しい奴だと思ったものだが、ナルトやサクラから聞く話で、最近は何となく馴染んできたらしいとは知っていた。今のサイをみてあの頃よりも人間らしい、血の通った暖かい感じがするのは気のせいだろうか。
ナルトと同じ班なら、感化されても不思議はないか…。
シカマルはうーん、と伸びをした。欠伸がでる。しかし、先刻までとは違い、頭がすっきりしている。やはり術は解かれたのだ。サイの話だと、カカシとヤマトは綱手に呼ばれたらしい。上忍は大変だな。次から次に任務だ。
しかし、あれは夢だったのか。飛段が、普通に目の前に飛びかかってきた。あれは影分身だから、本体は存在することになる。掘り起こしたとは悪趣味だが、それを繋ぎ合わせたというのか?もうすでに?
幻術では…なかったような。けれどあの時は暗部の術中にあって、自分の意識が普通ではなかった。……そうだ、飛段はサイが刀でぶった切ってくれたではないか。確かサイの鳥獣戯画の烏が潰れ、墨がバシャッと床に落ちたはず。見ると、やはり床に黒い跡があった。やはり、あれは影分身だったのだ。
飛段の始末は暗部に任された。あんな、人の血を舐めて殺すような能力、暗殺にはもってこいだが、通常任務には必要のない能力…!…だから暗部が欲しがるのか。
飛段は暗部に復活させられているのかもしれない。
敵討ちはしたけれど、そんなに簡単に生き返るなど、常識では考えられない。もしそうなら悪夢だ。命懸けでリセットボタンを押したのに、また死闘のゲームが始まるようなものではないか。
そんなもの…許さない。何度だって俺が埋めてやるまでだ。
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