「……やっと、……終わった……っ!…」
医師が針をトレーに置き、脱力したように椅子に体を投げ出した。
本当に都合のいい体だ。
繋ぐのに秘術が必要だったのだろうか、と疑問さえ湧いてくる。

飛段は、暫く前まで縫われる度に「イテッ!」とか「クソッ!」とか、性懲りもなく小声でリアクションをしていたのだが、いつの間にか気持ち良さげに手術台で寝てしまっていた。痛みもすぐ快感に変わる男だからなのだろうか。

白い陶器のような肌に、少し血の滲んだ縫い目が痛々しかったが、初めに縫った部位からその傷痕が細胞分裂しながらくっついていっているのが見える。なんという体だろう。まさに不死だ。
細胞のサンプルはあるから、研究はできる。ダンゾウ様もお喜びになるだろう。

片付けを始めると、飛段が伸びをした。起きたのかもしれない。医師は、手枷をするのを忘れていたことに気づき、飛段の腕を握った。すると、パッとピンク色の双眸が開き、今の状況を把握しようとするかのように辺りを確認した。

扉の外で話し声と近づいてくる足音が聞こえる。

飛段はババッと印を組み、影分身を2体作った。手術用の作務衣のような格好だ。手術用のメスを何本かひっ掴むと、医師が何か叫んだり助けを呼ぶ前に、本体と影分身一人は、ボン!と消えて居なくなった。


(…角都は、この棟の手術室にいるはずだ、とあの医者は言ってやがったな……ほんとにどっちが煩せーんだよ!忍として、ねーだろ、情報漏らすなんてよ。……まさか、ガセネタじゃねーだろーな……?おいおい、いー加減にしてくれよ!)

などと思いながら飛段が進んでいくと、着物を着て頭に包帯、杖をついて歩く強面の男と、顔の造りの綺麗なお付きの男が、ある部屋から出てくるのが見え、飛段は物陰に隠れた。

「…まだ暫くかかりそうだな。」
「…はい…」
「飛段の所に行くぞ。あやつを支配下に置かなくては。」

(支配下?俺を利用するってのか…なら逃げるまでだ。)

こっちに来る。どこにいったら外に出られるのか、分からないが、飛段はがむしゃらに走り出した。


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