イタチだった。
黒い睫毛に縁どられた紅く美しい双眸が、控えめに、だが抜け目なく光っている。
それを迎える輪廻眼の男は、端正な顔立ちながら顔や体にいくつものピアスを開けた美青年だった。椅子に深く掛け、来客を見上げ、顎のピアスを指でゆっくり触りながら言った。
「木ノ葉を潰す…。異存はないな。」
「あるはずがなかろう」
ペインの言葉にイタチは目を逸らさずに答えた。
「同胞を皆殺しにし、暁に居ることでお前の野望は叶いそうか?」
「俺の野望?……どうだろうな。
ところで、非番の日に呼び出して用件はそれだけか。」
イタチにしてはぞんざいな物言いに、不穏な空気が流れた。
ペインは手を止め、じっとイタチを見た。少し離れて控えていた小南は、ペインの殺気を感じとり、彼を不安気に見つめた。しばし沈黙が流れ、
「俺の眼は、お前の眼よりも先が見えているということを忘れるな」
ハッとするほど威圧的な声が響き、イタチは分かった、という風に眼を閉じて恭順の意を表した。物腰を和らげ、ペインは続けた。
「あるまじきことだが、立て続けに暁の負傷者が出ている。報告によると、角都と飛段はお前の里に捕らわれているそうだ。おまけに飛段は暗部と組まされているらしい。角都の所在は分からない。
そしてつい先程、鬼鮫が絶体絶命に追い込まれた。飛段が殺ったそうだ。ゼツが鬼鮫に鮫肌を触れさせ九死に一生を得たが、今、ゼツの能力で回復中だ。 非番の所悪いが、」
とペインはイタチをもう一度見上げ、
「俺はここ何週間かのうちに木ノ葉に行く。お前は今すぐ別ルートで潜入し、探してもらいたい。
……角都を。」
少し言葉がとぎれた後にペインは、
「…もし諜報機関の尋問にかけられていたら、」
と言った。
「分かっている」
イタチは遮り、瞬時に姿を消した。
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