己の荒い息遣いと、自分のものではない声にならない嗚咽が漏れ聞こえ、飛段は力任せにのしかかっていた体を、離した。そして着衣の乱れを正し、緩んでくずれた髷のまま膝の間に顔を埋めたシカマルの肩が上下するのを煩わしそうに一瞥した。
飛段は自分の額に触れてみたが、あの忌まわしい呪印は跡形もなく消え去り、あるのはただ高ぶった行為の名残りの気だるさだけだった。

目が合い、妙なビジョンが見え、あの印が出てしまうと、飛段もシカマルもお互いにおかしなモードになってしまい、性的な行為に没頭することしか出来なくなってしまう。
互いに欲情し、征するというその行為の最中、感情までもすべてが支配されているかというと、そうでもないだけに、疑似恋慕の中で見えるビジョンにより憎しみが沸々と生まれ、さらに結び付きを強めてしまうようだ。
フーが狙っていた禁術は、とうとう完成したといえるのではないか。
そして行為の後は残酷にも体は少し回復するようだ。まるで『生体エネルギーを相互充填している』かのようだ。その表現が適切かどうか分からない。しかしこの二人にとっては結局全て、バトルであるのは間違いない。

シカマルが顔を上げた。体力は少し回復したようだが、絶望を絵に描いたようなひどい顔をしている。木立の中からみる空は薄紫で、もうすぐ夜明けのようだ。サァーと霧雨が降ってきて、二人の火照った体を濡らした。






その頃、某所。
開けた窓から、夜明けの空にたなびく雲が次第に厚みを増していくのを、輪廻眼の男が見つめていた。

(…雨の匂いがする)

黒地に赤い雲の紋様のマントを着た女は、部屋の離れた所から憂いの眼差しでその男を見つめていたが、気配を感じて男に声をかけた。

「…来たわ。彼が…」

いつのまにか部屋の中央に、黒髪を紅い紐で結わえた写輪眼の男が立っていた。
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