鬼鮫が気力を振り絞って、ジャキッと鮫肌を構えた。こちらに気がついたようだ。致命傷で動きが鈍いとはいえ、血に染まる強面の巨体が放つ殺気たるや、身がすくむどころの話ではない。
それでも負けるわけにはいかない。
飛段を味方にした布陣で、負ける筈がないと信じたい。
「アイツが動くより早く、まずは影真似で捉える!」
「僕は刀を…!ここまで追い込んだ以上、一気にカタをつけないと!」
シカマルがすかさず影真似を発動し、鬼鮫を捉えた。が、シカマルが満身創痍で集中、チャクラを練り上げたにもかかわらず、鬼鮫はビクともしない。普通なら死んでいる傷でこの力だ。
(…この…野郎!………力では勝てない!)
「…援護する!」
サイは巻き物にスラスラと筆を走らせ、大きな熊をキサメ目掛けて放った。隙が、僅かな隙が鬼鮫に生まれた。
シカマルは間髪入れず、ググッと両手を刀から離す仕草をした。
ドスッ、と大刀が落ちた瞬間、サイの熊が大刀をひっつかんで投げ飛ばし、鬼鮫から刀を遠く離した。
すぐさま印を組み直したシカマルは、影縫いを発動した。
鬼鮫の体を無数の影が貫く。数秒後には鬼鮫は全く動かなくなった。身体中の血液が流れ出てしまったように地面は赤く染まっていた。
サイは墨分身をして、飛段の様子を見に行かせた。案の定、飛段は陣形にぶっ倒れていたが、サイを見るとニッと笑った。
「…ハアア……やっと逝った…ぜ!畜生!」
「…すぐ戻る」
本体のサイは、分身の情報を受けとると、シカマルに戻ろう、と言った。
あの刀はどうする、とシカマルが言いかけた時、刀はなんと自力で持ち主めがけてザザサザッと走り寄ってきた。
(…チッ!キサメとの接触は避けなければ!)
キサメへの影縫いを解き、影を疾らせる。影真似で刀を掴むと、急にガクンとシカマルは膝をついた。
どうしたことか急に体力が無くなったような、チャクラが根こそぎ削られていくような感覚に襲われ、得体の知れない恐ろしさを感じた。
(これを長く持ってたら……確実に死ぬ…!)
影はパッと刀を離したが、シカマルはドサッと倒れた。サイはシカマルの異変に気づき、すぐに描いた大鷲にシカマルを乗せ、飛び去りながら言った。
「飛段が、仕留めたと言った!…刀は置いていこう、僕は超獣で触れたけど、君は術で直接触れたからか、チャクラの消耗が激しすぎる。」
「…ッ………」
二人は飛段の陣形に戻り、儀式を待つ間に丸薬を飲んで、体力回復に努めた。飛段は相変わらず儀式を堪能したが、シカマルはそれをどうこう言う体力も、気力も、まるでなかった。
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