変わり身や分身でかわしても次々に球状の水弾が降ってくる。運悪くそれに当たった分身が、すぐ水中に囚われてしまい、ブクブクと泡になって消えるのをサイは見た。水牢とは、忍といえども所詮息をしなければならない人間にとっては、捕まったら厄介な術だ。
何よりも、水は、サイの術にとって相性が悪い。超獣戯画は水遁には遣えないのだ。
空から攻撃されている今、もはや、鷲で空に逃げることは出来ない。

墨は水に溶けてしまうと、分子が細かくなるので空気中のような威力を発揮できない。
雷遁のような術を分子レベルで流すことができれば逆転は可能かもしれないが、この隊の者は皆、ある意味特殊な忍術しか遣えない。

(…けど水遁に勝てなくても、陽動になら使えるかもしれない……!)

地を這うようにして森に入ったが、その水球の水圧は非常に高く、当たった木々を木っ端微塵に砕いた。

「…気をつけてっ」
「…くそっ危ねえ」
「…ちょっ……オイィッ!」

飛段が叫んでいる。

「…代理、てめえの刀貸せ!!やっぱ後方支援は俺の戦い方じゃねえぜ!」

サイはチラッと飛段を見た。水弾に四苦八苦している今、思案している時間はない。

「しんがりで迎撃するんだ」

サイは文鎮刀ではなくクナイを2本、飛段に放った。


「…ヒャッホー!」

飛段は、サイの刀を踏み台にして、後方へ跳んでいった。
水弾が飛段めがけて二つ三つ襲いかかってくる。飛段はクナイを構え、軽々と避けた。と、水弾の陰から鬼鮫の大刀が迫る。

「…やべっ!…はあっ?」

飛段の足が宙吊りになって、うまく大刀を避けた。

「…はしゃいでんじゃねえよ!」

シカマルの影真似が、飛段を掴んで跳んでいた。

「ていうかいいじゃねえか、これ!掴んどいてくれれば俺は自由に動ける!」

(…てめえにかまけてるとこっちが動けなくなるんだよ!)

「先手必勝、本気で刺せ!」

シカマルは叫んだ。サイはダメ元で超獣戯画を連発し、水弾にぶつけた。水弾は薄墨のように色がつき、激しく波打つと、弾けた。

薄墨の飛沫が舞い散る中、鬼鮫の大刀が唸りをあげて襲ってくる。飛段はその刀の柄に跳び乗り、クナイの一本を鬼鮫の喉元に投げ、もう一本で鬼鮫の指をズバッと切った。



106
[prev] [next]

top

























人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -