「…サイ……!」

「…書いて。シカマル。」

サイは振り向かない。シカマルは怒りに震える手で筆先を紙に近づけた。
書くつもりもないのに、思いが字になって走る。

ーー理不尽すぎるだろ……叫んでも喚いても……還ってくるはずがないのに……後悔してる自分ばかり見えて、クソみたいな気になるんだよ………こいつといると!!………同じ班とか!!ありえねえよ!死んだほうがマシだってこいつに突っ込むくらいなら!だから俺は嫌なんだよ!!任務なんて放棄したいんだよ!!木ノ葉の為とか思って燃えてた少し前の俺とは別人なんだよ誰も俺の気持ちなんか分からないサイお前だって分からないはずもう最低レベルまで精神が堕ちたんだ救いようがない誰にも 死にたい死にたい 会いたいアスマに会いたいーー

書いた文字が紙から外れて数珠繋ぎになり、シカマルの回りを浮遊し始め、ぐるぐると彼に巻き付いていく。シカマルはあっという間に真っ黒い塊に包まれた。サイは素知らぬ顔である。

飛段はその様子にぎょっとして手が止まっていたが、筆は勝手に紙を滑り出す。

ーーーこええ…………!!角都角都角都角都ヤバいヤバいヤバい……………ーー

飛段のはそれだけで、浮遊して巻き付いてもたいした長さにならなかった。
飛段に巻き付いた文字を見て、サイは無表情を装うのに苦労した。


シカマルの塊から、すすり泣きが聞こえてきた。
それが何分か続き、止まった時、文字の鎖は消え、蛇は解けた。シカマルはうずくまっていたが、のそのそと寝袋に潜り込み、動かなくなった。すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。

そのうち、サイが干し飯を食べて寝袋に入った。飛段は急激に腹が空いたのと寝床が恋しいのを自覚した。


「…隊長代理〜…」

飛段が一言絞り出すと、彼の鎖も蛇も解けた。飛段はそれから一言も喋らず、寝袋に倒れ込んだ。
サイを真ん中に、寝袋は川の字になっていた。

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