(…………なんなんだよッ………)

川の中で凍えながら、体を洗い終わったシカマルは、川面に映る自分の影をバシャッと握り潰す。月明かりに水飛沫が光り、また川面に消えていく。

(……俺って………こんなに情けない奴だったか………!)

自分が、仇である飛段と関係を持つなど、吐き気がする。けれどさっきは、その行為に酔いしれていた自分がいたのも事実だ。
そして、飛段に言われた、『あいつと』という言葉。

ーーあいつが………、あいつが、俺の愛した男の、何を知っているというんだ!
なんで俺とあの人の関係が、あいつに分かるんだ!?ーー

アスマのことを、奴が口に出すことは俺が許さない。

「…お前に、殺されたんだぞ!!………そんで、お前をバラバラにしたのに!!訳わかんねえうちに一緒に暗部だよ!!…………ハハハ………何が禁術だ!!馬鹿にしやがって………!
奈良シカマルを、ナメるな!…………クソッ、……クソックソッ、クソッ………!!」

水飛沫か涙か分からないものが頬を濡らし、髪を濡らし、心底凍えそうなのに、シカマルはまだ川の中で突っ立って叫んでいた。


その少し前。サイは、シカマルが川に向かったのをそっと見送り、飛段のところに取って返した。

飛段は、相変わらずサイの羽織を羽織ったまま、座って、濡れた髪をタオルで乾かしていた。

「…隊長代理〜。聞こえてんだって、あれ。あの若造なんとかしてくんない?」

外で川に向かって喚いているシカマルのことを言っているようだ。
サイは静かに、シカマルにはアウトプットが必要だから、と言ったが、飛段はその言葉が、少なからず怒りを帯びているのを感じた。

「…なんだよ、てめえもあいつの味方かよ。そんなら暁に帰るか、俺も。」

「君が帰るところは、もうないよ……。
木ノ葉に改変されてる君を暁のメンバーがどう思うか、分かるだろ?
良くて『裏切り者』ってとこかな。
君は木ノ葉に協力するって僕には分かってる。だって相方が人質になっているし。
君が歯向かうなら僕の意思でそいつを殺したっていい、」

「今なんつった……」

立ち上がった飛段がサイの首を鷲掴みにし、壁に凄い力で叩きつけた。

「てめえ、いい加減にしろよ………おとなしくしてりゃ調子に乗りやがって!
いますぐ、呪ってやろうか」

「…ッ……ア……!」

飛段は、そのまま首を締めて、抵抗するサイの腕に噛みつこうとした。








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