シカマルは治療の間中、ボーッとして、治療にあたる看護師たちの労いの言葉もあまり聞いてないようだった。

忍であっても、負傷して痛さに耐えきれないこともある。他の者の安否を気遣うあまり叫んだり、遣りきれない思いを口にする者もいる。だが、一番気を付けなければならないのは、ショック状態にあって反応がない者だ。看護師たちの間ではそれは共通の認識だった。

付き添いのサイは、怪我よりも、シカマルのその精神状態の方が気にかかった。
ナルトの、サスケに対するやりきれない思い――味方から敵に転じたサスケが、いつかはこちら側に帰ってくることを望み、そうなるはずだと信じて疑わないがために傷付くのだが――それは、まだ救いがある。サスケがそうなる可能性はまだ否定できないからだ。

師の仇を討ったと思ったのに、命懸けでやった任務が反古にされたシカマルの場合は違う。自分の予測通りに、あの掘り起こされた男が、何らかの形で暗部に利用されるのだったら。シカマルは多分正視に耐えないだろう。戦いもしないで自分だけ新たな傷を負うことになる。
Sランク任務の、それも実戦の経験値が暗部とは違う中忍にとって、これを乗り越えるのにどれほどの時間がかかるものなのだろうか。

根育ちの自分なら、もうほとんどの感情が抑制されているから、割りきれる自信はある。ただ、ナルトたちと関わるようになって、空気の読めない、随分人間らしい感情が湧くようになってきたが、それと刷り込まれた根の精神は別物だ。

シカマルはそんな柔な人間ではないかもしれない。だが、この様子をみていると力になってやりたい気がしてくる。ナルトに感化されたせいだろうか。
サイは黙って、シカマルの代わりに投薬や飲み薬の指示を聞いてやった。


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