しばらくすると暗い空の雲が割れ、月が顔を出した。
シカマルは影に寄り添うように移動した。あたりの影が濃く、月明かりの当たる部分は明るく照らし出され、目が利くようになったが、敵からも見えるということを忘れてはならない。
パキッと小枝の折れる音がして、シカマルは振り向いた。

飛段がいた。
闇の中でも見えやすい銀の髪から、月の光を受けてキラッ……キラッと何か滴り落ちている。匂いで、それが血だと分かった。頭にべっとり、血がーー飛段のか、それとも誰かのかーー付いている。

飛段は、血などお構いなしに担いでいた荷物をドサッと投げ出した。鈍く重い音がする。誰かの死体のようだ。
黒い装束、顔を覆い隠すマスク、手袋、ゴーグル。その死体は遠目から充ても通常任務の服装ではないようだった。
半開きの口からは流血の跡が見える。手袋からポロッと蟲が転がり落ちた。それはすでに息絶えているように動かない。
(…シノ……じゃない、……油女一族の誰か……!)

地面に投げ出された拍子にゴーグルが割れた、息も絶え絶えのその男の目は、闇に潜むシカマルを捉えた。男の脳裏にフーが浮かぶ。

(『俺から連絡が途絶えて30分経ったらプランBだ』
と君は言ったな………。すまない。俺はもうダメだ……何かあった時のために、託されたものだけは……仕掛けたが……この様だ……。

………奈良の息子が………その役をやるんだな………)

トルネはそこで、グホッと血を吐き、絶命した。
シカマルは拳を握りしめて息を潜めていたが、 飛段はドサッと座り込んだ。そしてゆっくり、地面に仰向けに倒れ込んだ。
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